Un roman
□嫉妬する君はなにより美しい
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「ねぇ、フランス兄ちゃん」
「ん?何?」
ソファーに座りながら珍しく神妙な顔のイタリア。紅茶の入ったコップを両手に持ちながら隣りに座る。
顔をのぞき込むとその眉間には滅多に刻まれることの無い皺が寄っていた。
「イタリア?」
「あのね、俺駄目なんだ」
「は?」
全く意味の分からない言葉に首を傾げる。イタリアが駄目?何が?
彼はヘタレでこそあるが歌はうまいし絵はうまいし、優しいし、駄目な所など上げるほうが難しい。
「ヘタレなのがか?」
「ううん、そんな今更な事俺言わないよー」
「だよな、じゃあ何?」
「汚いんだ、俺」
思いも寄らない事につい言葉を失う。
汚いなんて可愛くて綺麗で美しいイタリアから一番かけ離れた言葉だ。だいたいイタリアが自虐的な事を言うのは極めてまれだ。
俯くイタリアの顎を上げさせる。
イタリアの目は赤く腫れ、泣いているようにみえた。
「・・・なんで汚いとか言うの?」
「なんで兄ちゃんが不機嫌そうなの?」
自分でも言ってて、あまりの自分の声の不機嫌さに驚いた。
嫌なのだ、イタリアがイタリア自身のことを悪く言うことが。いっそ自分を罵ってくれたほうが楽だと思えるぐらいに。
ごめんと謝り、次はお前の番だというようにイタリアを見据える。
「・・俺嫉妬した」
「え?」
「イギリスに・・ただの友達だって分かっていても嫉妬しちゃったの」
「それは・・」
「俺自分がやだ」
「イタリア!」
大きな目からぽろぽろと涙を流すイタリアをただ衝動のままに抱きしめた。
胸がうれしさで溢れて、もうどうにかなってしまいそうだった。好きで好きで好きどうしようもない。
腕の中で驚いているイタリアにキスをする。
もう飽きるほどにキスした。顔中キスをして無い所など無いほどに。
嫉妬して泣くイタリアはどんな聖母よりもなによりも美しかった。
end
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