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□Are you happy?
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今が幸せだと感じられるようになったのはいつからだっただろう。

本を読みながらふとそんな事を考える。

少なくとも、幼い頃は幸せという概念すら持ち合わせていなかったように思う。成長してからだって経済面で貧困こそしなかったがどこか物悲しく、満たされていなかった。
しかしだからと言ってその現状に不満があったわけでもなく、ただ国として課せられた仕事を淡々とこのしていたのだっけ。
ああこうして思い返してみるとなんとつまらない考え方をしていたのだろう。




「ドイツー何考えてんのー?」



持っていた本を押しのけ、ひょっこりと隣から顔を出したイタリアに意識を連れ戻される。
目の前の気の抜けた恋人の顔につい顔が緩んでしまう。


ああそうだ。イタリアに出会ってからだった、幸せだと感じるようになったのは。

イタリアと出会い、彼の考え方に触れ、惹かれ、友となり、恋人になった。
イタリアといると毎日が走るようにテンポよく進み、美しく彩られていく。水色のように清々しい日や灰色のように憂鬱な日、そして桃色のように甘い日々。
イタリアに出会ってから単色だった日々がまるで彼によって描かれていくかのように色を持ち始めた。

それは時に辛くもあるけれどそれは確実に幸せという呼ばれるもので。



こうやって考えてみると自分はいかに日々イタリアに助けられているのかがわかる。助けているつもりで助けられていたなんて。
きっとイタリア自信は無意識なんだろうけども。


(あ、)


ふと、思った。自分はイタリアのおかけで幸せだ。
ではイタリアは?自分は彼を幸せに出来ているのだろうか?

隣に座り自分の指と俺の指を絡ませて遊んでいるイタリアを見つめる。

幸せになって欲しいと思う。
イタリアにはいつでも笑っていて欲しいのだ。もし、それが自分といては叶わないものであったとしても。


「イタリア、」
「なぁに?」


にっこりと微笑むイタリアの愛おしさに胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
自分はイタリアを幸せにしてやれているのだろうか?


「お前は‥」


野暮なのは分かっている。
けれど聞かずにはいられない。


「今、幸せか?」


驚きに大きく見開かれる瞳。

余計なことを、聞いてしまったかも知れない。呆れられたかもしれない。こういうときにもっと上手く聞けたらいいのに。
けれど、どうしても知りたかったんだ。


幸せを教えてくれたイタリア。

彼を幸せにしたい。
もし叶うならば共に。叶わなくともせめて手助けぐらいはしてやりたいのだ。




「馬鹿だなぁドイツは」


しみじみとそう呟かれ、ああやっぱり馬鹿な質問だったかと頬をかいた。
覗くように彼の表情を伺うと何故だか照れたようなそれでいて嬉しそうに笑っていて。


「‥幸せだよ」
「え、」
「俺はドイツと一緒にいられて幸せ。俺の幸せはドイツと一緒にいることだもん」



ああそんな笑顔でそんな台詞。


ずるいぞイタリア。


頭の中で用意された台詞を口にするまえに気持ちにまかせてイタリアを思いっきり抱きしめていた。


end
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