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□申し訳ない?
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本当の絶望を味わったことがあるだろうか。

目の前が真っ暗になって、どうしたらいいか分からない。迫りくる恐怖に焦るばかりで対処することもできやしない。
けれど逃げることもできなくてただ悲痛な叫び声をもらす。
そんな絶望。



「ドイツ」


ああ、きた。背後から聞こえた声にごくりとつばを飲む。
イタリアの珍しく静かなその声に事態の深刻さと後戻りはできないということがひしひしと伝わってくる。

一体どうしたものか。


「ねぇ、こっち向いてよ」
「・・」


何も言わずに彼の立つ扉に向き直る。
怖くて顔が見れない。唯一見える白い足がゆっくりとこちらに向かって近づいてきた。


「黙ってるってことはさ、知ってるんだよね?俺が見ちゃったっこと」
「・・ああ」


はぁ、とため息をつかれ情けなくもびくりと肩がはねる。

どうしてこんなことになってしまったのか。
俺は両方大切だというだけなのに。

もっとしっかり隠さなかった自分がいけないのか。
イタリアに詮索するなといっておけばよかったのか。
それとも。

こんなことになるならば、いっそ捨ててしまえばよかったのだ。
イタリアのほうが何倍も大切なのだから。


「ドイツ」
「すまない!」


ベッドの上で頭を下げる。あまりの勢いにスプリングがぎしりと軋んだ。
イタリアが少し驚いたように息を呑んだのがわかった。


「捨てておく、べきだった。けれど俺はお前にあんなことするつもりは・・」
「それは別にいいの」
「は?」


思わず上を向くと頭上からばさばさと音を立ててDVDと雑誌が落ちてきた。
はっと息を呑んであわててそれをかき集める。


「俺はドイツのSM趣味を攻めるつもりはないよ」


そう、SM趣味。
さっき降ってきたDVDのパッケージはおおよそ一般人には見せられない内容のもの、いわゆるアブノーマルな趣向のもの。
国民性のせいにするつもりは毛頭ないがわが国民の多くひいては自らもそういう趣味があることは認めざる得ない。

しかし今まで自分はそれを必死でイタリアに隠してきたのだ。
痛いこと辛いことが嫌いな彼にこれ以上の負担はかけまいと我慢してきた。

けれど、とうとうばれてしまったわけで。


「・・本当に申し訳ない」
「だからいいって」


イタリアは困ったように笑うとベッドに腰をかけた。

イタリアが怒っているのはこの趣味のせいではないのか。
自分がアブノーマルな趣味だから怒っていたのではないのか。
違うなら一体―――



「何で、黙ってたの?」
「え?」
「だからなんで黙ってたの!?」


じっと睨まれ、返答にどもっているとイタリアははぁとため息をついた。
そしてぽつりと呟いた。


「俺、そんなに魅力ない?」
「は・・?」


あまると唐突さに口をぽっかりとあけているとぐわっと胸倉をつかまれ、べっどに押し倒される。
その馬乗りの状態のまま強引にキスをされた。


「イ、イタリ・・」
「やろうよドイツ」
「!?」
「縛ってもいいし垂らしてもいいよ。だから・・」
「ちょっと待て!一体なんの話・・」
「俺とはしたいとは思わないの?」


自分を見下ろす潤んだ瞳を見て、やっと気づいた。

ああ、違う。そうじゃないんだ。愛してる。
まず、そういってやらなくてはいけない。けれどイタリアの必死さが可愛くて愛おしくて。

彼の小さな頭の後ろをむりやり引き寄せ、抱きしめる。
そして耳元に口を寄せる。


「もう、我慢しないからな」

そう囁くとイタリアが胸の中で笑った気がした。

end
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