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□窓から見えた君
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(あ、アメリカ)



教科書を読むだけの低レベルな授業に飽き、ふと窓の外に目をやるとグラウンドにはボールを追い掛けて走るピンクのゼッケンを来たアメリカが目にとまった。
体育のためか眼鏡を外しているアメリカは妙に新鮮で格好いい。
その横には茶色の髪を揺らしてアメリカからボールを奪おうとする水色のゼッケンのイタリア。
どうやらサッカーの試合中らしい。

グラウンドにはピンクと水色の色が転々と彩っている。


(頑張ってるな)


ボールを奪おうとちょこまかと足を出すイタリアから懸命にそれを死守するアメリカをほほえましく思う。

もとよりアメリカは運動神経は悪いほうでは無いのだがサッカーよりもベースボールが好きな彼にとってイタリアは強敵に違いない。
ひょいひょいと身軽にフェイクをかけたりとするイタリアの技術は目を見張るほどだ。


遠くからでよく分からないがきっと今きっとアメリカは汗をかきながら追い詰められたような、それでいて楽しそうな表情を浮かべているのだろう。
それがイギリスにはありありと想像できて小さく微笑む。きっととても可愛く格好よく、色っぽいのだろう。


(あ、)


一瞬、こちらを向いたアメリカとばっちりと目があった。驚いて持っていたペンを落としかける。

けれどすぐに視線はボールに向けられ、目があったそぶりも見せない。
気がつかなかったのだろうか。眼鏡をかけていないし見えなかったのかもしれない。


その時、ふとイタリアが視界から消えたと思うとアメリカの足元からボールは消えていて、イタリアは相手側の陣地に走り出した。
グラウンドの水色ゼッケンに歓声が沸く。その中をイタリアが悠々と走り抜けていく。


プロ顔負けの華麗なフェイクをかけたイタリアにボールをとられたアメリカはボールを追わず疲れたようにその場から動かない。


(大丈夫か‥?)


怪我でもしたのだろうかと不安になって見ていると俯いていたアメリカは急に脱兎のこどく勢いよく走り出した。

驚いて見ているとかなり距離の開いていたイタリアにすぐに追い付き、彼の足元のボールを空高く蹴り上げる。


(なっ‥)


あまりのアメリカの勢いにイタリアを含め誰もが動けずにいると、アメリカは落ちて来たボールをトラップするとそのままドリブルして水色ゼッケンのゴールへと走り出した。

途端金縛りがとけたかのように敵も味方も彼を止めようとまたフォローしようとアメリカを追いかける。

しかし何故か先より断絶速くなったアメリカは彼らをいとも簡単に降りきり、水色ゼッケンのゴールキーパーとの一騎打ちとなる。


(頑張れっ!)


知らない間に握った拳に力を込める。

ピーッと笛の高らかな音が鳴り響き、アメリカのシュートの成功を知らせた。ふぅ、と安心したように息をはき椅子にもたれ掛かる。

黒板を見ると随分進んでいる。もちろんこの程度で授業が分からなくなるということはないのだが。

もう一度グラウンドに視線を戻すとピンクゼッケンの仲間達にハイタッチするアメリカ。
ゴールが決まって良かったような、仲間達にハイタッチするアメリカにちょっとした嫉妬をしたりと複雑な気持ちでそれを眺めていると不意にアメリカがこちらに向き直った。

そして突き上げるVサイン。
さもどうだと言わんばかりの、自慢げな表情のアメリカについ噴き出してしまいそうになる。


嗚呼そういう事か。


格好悪い所を見せたくなくて、格好よい所を見せたくて頑張ったアメリカが可愛くて愛おしくて。

教師から見えないようにそっと親指を立てて見せた。


end
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