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□こんにちは
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最近、夢を見るのが怖い。

イタリアを縛り、閉じ込め、辱め、傷つけ、泣かせる。
一番してはならないことを、している。というのに、自分の心はこれ以上無いくらいに満ちているのだ。



そんな夢に何度も飛び起こされた。ぐっしょりと汗で濡れたシャツにそんな夢を見てしまう自分に苛立つ。
しかしそれよりなにより起きた後の自分が吐き気だけでは無く、欲情を覚えていたのにほとほと呆れまた嫌気がさした。

欲望を映すという夢は、自分で気づいていなかった欲望をありありと俺に見せつけてきたのだ。


愛している、だけど辱めたい。
笑っていて欲しい、だけど泣かせたい。
守ってやりたい、だけど傷つけたい。


矛盾したその気持ちはイタリアとの穏やかな日を重ねていく毎にふくらんでいった。
一見明るい、優しげな日々は自分にとって苦悩の連続だった。

彼の頬を見るたびにその頬を流れおちる涙の美しさを思い出し、彼の真っ白い肌を見るたびにきっと血が映えるのだろうと想像してしまう。
そしてゆっくりと自分が堕ちていくのが分かる。


いけない。違う。そうじゃない。俺はそんな事、望んでない。
汚しては駄目だろう。綺麗なままでいて欲しいんだろう。笑っていて欲しいんだろう。


そんな理性の歯止めも呼び覚まされる穢れた欲望の前にだんだんと頭を垂れていく。
欲望の前では人の意志もモラルも愛も美学も取るに足らない存在になってしまうのだ。


愛しているから辱めたいんだ
泣かせたいんだろう?閉じ込めたいんだろう?傷つけたいんだろう?

なんぜかって?
イタリアが美しいから、俺がイタリアを愛しているからに決まっているだろう



ああ、そうか。
目の前がぱっと開けたような気がした。真っ暗の迷宮からやっとゴールにたどり着いたような。
それはまるで扉を開くかのようで。

全て合点がいった。
俺は、イタリアを愛しているから、彼を縛り、閉じ込め、辱め、傷つけ、泣かせたいのだ。



こんにちは狂気。

end
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