Новый

□守ってあげる
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「ん‥っ」


目を覚まして一番はじめにイギリスの視界に飛び込んで来たのは見覚えの無い白い壁だった。
急いで体を起こし、辺りを見回せば20畳ほどの綺麗に整頓された部屋。壁紙も天井も家具も今自分が寝ているベッドも全てイギリスの記憶にない。
まだはっきりと覚醒しない頭で懸命にここがどこだか考えた。

昨日は二週間ぶりに暇ができたのでアメリカの家に泊まったのだっけ。飯食って映画見て批評して喧嘩して抱きしめてキスして。
確か寝たのもアメリカの寝室だった筈。


そうだ、アメリカは?
眠りについたときの記憶は曖昧だが、確実に自分はアメリカと寝ているはずだ。


もう一度回りを念入り見渡すが、彼の姿は見受けられない。


慌ててベッドから飛び出すとジャラと金属の音がした。驚いて音のした方に目をやると自分の両手首と壁を繋ぐ銀色の冷たい鎖。



「なんだよコレ‥」



ぐいぐいと引っ張ってはみるものの、全く取れそうの無い鎖に舌打ちをする。
鎖の長さはさほど短くはないが自分の今いるベッドの対極にある扉までは到底届かなそうだ。
一体どうなっているんだ。
誘拐、にしてはあまりに待遇が良すぎる。見たところ自分の部屋は客室やホテルのようでそれなりに上等そうだ。
第一、誘拐したということはアメリカ邸にこっそりと忍び込み自分達を連れて出ていかなくてはいけない。
そんな事が容易にできるほどアメリカ邸の警備システムは手薄でない。

誘拐ではないのだとしたら一体なんだろう。

そう、それにアメリカの存在。それがイギリスの心に何より不安をもたらしていた。
一体、何処にいるのだろう。違う部屋で自分と同じように繋がれているのだろうか。
それならいい。しかし彼は超大国アメリカだ。自分も思い当たる節が無いといったら嘘になるがアメリカはきっとイギリス以上に怨みを買っているに違いない。
もし彼に怨みを持った誰かの犯行であったとしたら、現在アメリカは無事だろうか。

くそっ、と吐き捨てもう一度闇雲に鎖を引っ張る。
なんて、不甲斐ないんだろう。
昨日、飯を食いながら映画を見ながらベッドの中で繋がりながら、愛してると囁いてくれたアメリカを思い出し涙腺が緩む。

ああ、もし彼に何かあったら。そう考えると目眩がするほどの絶望感を感じる。


切れる兆しどころか軋むことすらない憎たらしい鎖を苛立ちに任せて力いっぱいに蹴飛ばした。



その時、向かい側の壁にある扉からノックをする音が聞こえた。

びくっと驚き、そちらに向き直る。
ゆっくりと開く扉にごくりと唾を飲んだ。




「やぁイギリス」


扉からひょっこりと顔を出したのは他でも無いアメリカで。
つい、安心してその場に座りこんでしまった。

end
NEXT→続く

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