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□愛おしい弟よ
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神より尊く天使より清らかな、何より美しい弟よ。
俺はお前が愛おしい。何よりも愛おしいのだ。
長いまつげに縁取られた紅茶を思わせる瞳、桃色の小さな唇、陶器のような指、さらさらと指を擦り抜ける細い紙、全てがお前のものであるが故に狂おしいほどに愛おしい。


お前の目に映るもの、耳に聞こえるもの、手に触れるもの、全てが愛おしく美しい。
人も、食べ物も、動物も全て。



けれど。

それが俺には妬ましい。
お前に見られお前聞かれお前に触れられるもの全てが妬ましく憎い。



何故、お前の瞳に映る?
何故、お前の耳に入る?
何故、お前の手に触れる?



お前には俺さえ居れば十分じゃないか。
血を分けた兄弟。俺はお前さえ居れば何一ついらないというのに。
もしお前が望むのなら、富も名誉も友も自らの命さえ簡単に捨てられる。


お前はどうだ?友を、捨てられるか?
スペインを日本をフランスをポーランドをプロイセンを、そしてドイツさえも。
お前は捨てられるのか?

無理だろう、無理だろう。知っている、知っているさ。何て言ったって兄弟だ、お前の事は1番知っている。
お前は優しい、だから無理だ。

なぁヴェネチアーノ、なんのための俺だと思う?
優しいお前とその兄である俺。神がどうして俺達を兄弟にしたのか、分かるか?

お前が出来ないことを代わりに俺がするためだったんだ。



なぁヴェネチアーノ、お前には俺しか必要なかっただろう?
だってお前は全てを失ってもまだ生きているじゃないか。


end
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