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□君の目標
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「そういえば、新年の目標は決まりました?」


日本邸にイギリスと二人招待され、炬燵の中でぬくぬくと暖まっている時日本がふと尋ねた。
手に持っていた食べかけのみかん、と呼ばれるこぶりのオレンジの残りをを口に押し込む。
横に座ったイギリスがみっともない、とぺしりとアメリカの額をこづいた。

アメリカのように寝転がらず、腰までを炬燵に入れ上体を起こしているイギリスがみかんを口にほおばっているアメリカの変わりに答える。


「俺は特に・・。日本は新年に目標をたてるのか?」
「ええ。他国ではなさらないんですか?」
「いや・・国民はしているのかもな」


うん、と一人頷くイギリスが少し気まずそうな顔をしているのがアメリカには分かった。

人生の大半を戦いに明け暮れていたイギリスはまずもって新年を祝う、という概念を持っていなかったに違いない。
まして目標を立てるなど願望や欲望はあったとしても、七つの海を手中に収めていた大英帝国様はしたことが無いだろう。

イギリスのその微妙な反応に不思議そうな顔をする日本。
その間に流れる空気に耐えかね、アメリカが助け船を出した。


「俺はヒーローになることだぞ!」
「それ目標じゃねぇし!願望だろそれは!ったくいつまでたってもガキだな」
「いいじゃないですか。夢があって」


くすくすと笑う日本と呆れたような顔をするイギリスに少し腹が立った。
せっかく人が助けてやったって言うのに。
そんな風に腹を立ててしまうのもガキと呼ばれる所以だろう。それでも腹が立つものは腹が立つ。
少し意地悪をするつもりでイギリスに尋ねる。


「じゃあイギリス。君、ここで決めなよ新年の目標」
「はぁ?」
「それは良い考えですね」
「ほら、早く」


予想通り乗ってきた日本に困るイギリス。
その様子に心中で下を出す。

うんうんと悩むイギリスを視界に捕らえながら炬燵の上のみかんを剥きにかかる。

質問をしたのは自分ではあるが、どうしてそんなに悩むのだろう。
適当に健康だの運動だの年寄りらしい目標を言っておけばいいのに。別にそれを絶対に守らなくてはいけないわけではないだから。

そう考えてそれは彼には無理だな、と思い返す。
外交上、嘘なんてきっと数え切れないほどについているに違いないのにプライベートになると彼は嘘をつくのがとても下手だ。
というよりまず嘘をつく、という選択しが基本的に彼にはない。とにかくイギリスは馬鹿正直なのだ。

そこまで彼を理解しているのに、さっきのは少し意地悪だったかもしれない。
目標を立てるなんて慣れていない事をけしかけてしまった。きっと今彼の頭はパンクしかけているに違いない。


「イギリス、遅すぎるよ!」
「う、うるせぇな!今考えて・・」
「遅すぎるから俺が決めてやるんだぞ!」
「おいっ!」
「イギリスの目標は、ヒーローの俺のヒロインになることに決定だ!」
「なっ・・!」


ぼっと真っ赤になったイギリスに何故かいきなり恥ずかしくなって剥いたみかんを一房口につっこんでやった。

end
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