Ein Roman

□君を守るため
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太い腕、厚い胸板、筋肉のついた足、われた腹筋。

アメリカの筋肉のついた体が目に入るたび、見せ付けられているような気になる。
イギリスがどんなに鍛えたって手に入れることの出来なかったそれらを、アメリカは流石は超大国と言われるだけあってか完璧に兼ね備えているのだ。





(腹立つ‥)


枕にしている太いアメリカの腕に目をやる。

頭の下の腕は昨日の夜から今日の朝まで何時間とその体勢でいるというのに全くびくともしない。背中で聞こえる暢気な寝息にムカッ腹がたってきた。


硬く、筋ばっている太い腕。
この腕が驚くほどの力で自分を軽々と持ち上げるのだ、と思うとなんだかひどく不思議な気持ちになっとくる。

その長い腕にゆっくり手を這わす。白い肌をなでて、筋を関節をなぞる。
そしてその先にあるアメリカの手に自らの指を絡めた。

長く無骨な手をじっくりと眺める。
プニプニとしていた小さな頃とは打って変わり、もうすっかり男の手だ。こういうところでもうこいつは子供ではないんだな、と気付かされてしまう。

この大きな手には、腕には一体どれほどのものを抱えているんだろうか・・?


「でかくなってんじゃねーよ‥」


なんだか淋しくなって絡めた指をニギニギと弄んでいると、いきなり上から腕がふってきた。
枕にしていた腕に挟まれ、抱き抱えられる形になる。



「わっ?!ちょっ重!」
「重いとは失礼だなぁ」
「ア、アメリ!?」


後ろから寝ていた筈のアメリカの声が聞こえ、驚いて振り向くと目の前にアメリカのニヤニヤとした顔があった。



「ゃっ近いっ!!」
「いいじゃないか、昨日あんだけくっついておいて何を今更恥ずかしがる必要があるんだい?」
「そういう問題じゃ‥」
「で、俺の手がどうかしたかい?」



そう言われてからはっとして急いで手を離した。その様子をニヨニヨと眺めるアメリカをきりっと睨む。


「イギリスは俺が大きくなって淋しいの?」
「は!?お前聞いて・・!」
「あのね、俺が大きくなったのは君を守る為なんだぞ!」
「え・・?」


思いもよらない言葉に目が点になる。
今、いったい何と・・?


「小さい頃からぼろぼろの君を守ってあげたいって思ってたんだ。その為にいろいろ苦労したけどね、最終的にはこうなれたわけだし」


結果オーライってやつ?と笑うアメリカの鳩尾を殴る。
うげっ!とうなるアメリカに真っ赤になった顔を見られないように布団を顔までかぶった。



「この俺を守るなんて100億万年早いんだよ!このメタボ!!」


なんとなく布団の外でアメリカが笑った気配がした。


end

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