Ein Roman
□さらりと言わないで欲しい
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「すっげえぇ!!超きれーっ!」
「だろ?」
すごい、すごいとはしゃぐイタリアに得意げに笑って見せる。
暇だというイタリアを車にのせて連れて来た丘はいかにも彼の好きそうな、白やオレンジの美しい花が一面に咲き乱れている。
しかもそこからは自分、もとい弟の国であるドイツの活気ある街がどこまでも続いてみえるのだ。
ここからの景色はプロイセンのお気に入りの景色の一つだった。
ぴょんぴょん跳びはねて騒いでいるイタリアに連れて来たこちらまで楽しい気分になってくる。
「俺っこんな所、初めて来たよっ!」
「良いだろ?」
「うんっ」
プロイセンありがとっと心底嬉しそうに笑うイタリアに胸がきゅん、とする。
我ながらぞっこんだな、と思うがイタリアのその笑顔の為ならなんでもやってのける自信があった。
ふと足元に咲く、可愛らしい赤い花を見つける。小さいが凛と咲くその花をプチッとつみ取りイタリアちゃん、と彼を呼び止めた。
「何ー?」
「よっと。お、やっぱ俺の見立て通り、よく似合ってるぜ」
振り返ったイタリアの髪に赤い花を差し込む。紅茶色の髪と赤い花がよく似合ってとても可愛い。
満足げに笑うとイタリアが照れたようにはにかんだ。
「ヴェーありがとープロイセン」
「おう!じゃ、そろそろ家帰るか。ヴェストが心配するし」
「そうだね、今日は楽しかったよ!」
「そうか!そりゃ良かったぜ」
「プロイセンとこんな素敵な景色見られて良かった!」
「え?!」
幸せそうな微笑みを浮かべこちらを見るイタリアに心臓が跳ねる。
今、彼はなんて言った・・?
「こんどはドイツとか日本とも一緒に見たいねーそうだ!今度に兄ちゃん達も呼んでみんなでピクニックしよーよ!」
「そんな事は別に良いけどイタリアちゃん!さっきのもう一回言ってくんねぇ!?」
「みんなでピクニックしよーよ?」
「もうちょっと前!」
「今日は楽しかった?」
「その後!」
「今度ドイツとか日本とか・・」
「その間!!」
「えー俺なんか言ったっけー?ごめん、覚えてないや」
「まじか・・」
もうちょっとちゃんと聞いておけば良かったと自己嫌悪にうなだれる。
もしかしたら今の一瞬は神が自分に与えた唯一のチャンスだったかも知れないのに・・
(あー!もう!大事なことはサラリと言わないで欲しい!!)
end
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