Ein Roman

□始めてのサボりと恋
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毎日毎日、仕事仕事。トルコ追っ払って会議にでて戦争をする。

遊ぶ暇なんて当然のように、ありはしない。回りの人間は気の毒がったが、でも別に良かった。

自分は国という大きな責任のある身だし、ガキみたいななりをしてたってどんな人間よりずっと長生きをしているんだ。
馬鹿のプロイセンが阿呆みたいに遊んでいるのをみても羨ましいなんて微塵も感じなかったし、だから俺は一度だって仕事をさぼって遊びたいと思ったことはなかった。


そう、いままでは――



いつものように侵入者の報告をうけて、駆け付けたそこにいたのは小さい白い子供。
小さい体をより小さく丸めてうずくまるその子供は、後ろに立つ俺にはこれっぽっちも気付いていないようだった。

トルコだと思っていた分、拍子抜けだが子供ていって油断するわけにはいかない。
手に持っていた剣を構え、できるだけ低い声をだす。



「おい、お前。こんなところで何をしているんだ?」
「え?っう、うひゃあっ?!」



振り向き怯えたように怯えるその子に少し驚く。どうやら彼(彼女)は自分と同じく国らしい。
目からぽろぽろと涙を零して怯えてる様からは敵意は感じられない。恐らく迷い込んだのだろう。

より小さくなってびくびくと震える子供にため息をついて剣先を下ろしてやる。



「お前、名前は?」
「‥ぼ、ぼくはイタリア」


剣がおりたことに安心したのか、イタリアは涙をふいて立ち上がった。涙で長いまつげが濡れて光っている。
肌が白かったり華奢な所をみるとどうやら女の子のようだ。

よく見るとイタリアは背丈は小さいが自分と同じぐらいの年齢かもしれない。



「なんでこんなとこにいるんだ?」
「お花つんでたら迷子になっちゃって‥」
「お花って‥‥」




イタリアが片手ににぎりしめていた花を見て、つい呆れてしまう。
自分は毎日、休む間もなく働いているのにイタリアは暢気に花をつんで迷子になっているのだ。



「君は何て言うの?」
「俺か?俺はハンガリーだ」
「そうなんだ、よろしくねハンガリー」



にへらと締まりのない顔で微笑むイタリアに、どきりと胸が疼く。
そのよくわからない気持ちに内心首を傾げながらもイタリアの差し出す手をとる。






「イタリアは仕事とかしないのか?」
「うん、ぼくは何にもしなくていいって言われてるんだ」
「ふぅん」
「ハンガリーは毎日仕事、大変?」
「んーまぁ普通だな」
「ぼくには無理だよー、遊べないなんて死んじゃうや」
「そんなことないぜ、別に辛くはないし」
「偉いねーハンガリー。あっそうだ!今度一緒にお花畑で遊ぼうよ!」
「お花畑?」
「うんっハンガリー髪綺麗だからきっとお花の冠似合うよ」



ねっと笑うイタリアについ頬が紅潮する。さっきから一体俺の体はどうしたって言うんだ。
赤くなった頬を見られるのが恥ずかしくてそんなことねぇよ、とそっぽを向く。

なんだかイタリアと話すのはとても楽しい。上司とかと話すのとも違うし馬鹿プロイセンと話すのとも違う。
彼女と話しているとなんだか胸の辺りがふよふよとしてきて気分が高潮するのだ。

ずっと話していたい。このままでいたい。仕事なんてほったらかしてこのままイタリアと話していたかった。



「おーい!ハンガリー!!」


遠くから聞こえる近衛兵の声に眉を寄せる。そうだ、俺は仕事中なんだ。
俺は今まで仕事をサボったことなどないし、サボろうとも思わなかった。それは正しいことだし今だってそうするべきだ。
そんなことは分かっている。分かっているが・・



「ハンガリー?呼ばれて・・」
「イタリア!さっき言ってた花畑に行くぞ!」
「え?でもお仕事が・・」
「いいんだ!ほらっ早く!」


俺は戸惑うイタリアの手を取って近衛兵の声がする方から、城から、王から、背を向けて走った。

その日、始めて俺は仕事をさぼった。


end

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