Ein Roman

□基本予定は予定のまま
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今日という日をずっと楽しみにしていた。一ヶ月前から指折り数え、今日がくるのを待っていた。
一週間前から服を決めてプランも完璧に立てていた。
昨日の夜も、もうすぐこの日がくると思うと目が冴えて全く寝られなかった。おかげで寝不足で目が充血しているが、もうそんな事はどうでもいい。

待ちに待ったこの日がついに来たのだから――





「ヴェーごめんプロイセン、ちょっと遅れたー」
「い、いや!俺も来たばっか!」


向こうから待ち合わせ時間10分遅れで走ってくるイタリアに噴水の前に座りながら笑いかけた。

来たばっかり、なんて大嘘だ。いても立ってもいられなくなって家を飛び出し、待ち合わせの3時間前にはもうここにいた。
そんな事には気付かず、よかったーと笑うイタリアに胸がキュンとする。


一ヶ月前にイタリアとようやく約束したデート。スペインもフランスも邪魔できないように日にちを調整して決死の思いで誘ったデート。
イタリアがこれをデートとして認識にしているかは分からないが二人きりでショッピングをしたり映画を見たりするのだ。
片思い歴10世紀以上のプロイセンが浮足立たないはずがない。



「んじゃそろそろ行くか!」
「うん!」



さも嬉しそうに返事をするイタリアの可愛さに目眩がする。
今日待っているだろう二人きりの至福を想像してプロイセンは早くもドキドキしていた。


(イタリアちゃんと手繋いだり、腕くんだり・・考えただけでたぎるぜ!)


しかしそんなプロイセンの幸せは突然現れた黒髪の青年の存在をもってして一瞬で砕け散った。



「おや、イタリア君にプロイセンさん」
「日本!!」
「お久しぶりです」


にっこりと穏やかに微笑む日本に先までのうきうきとしていた気分が音をたてて崩れていく。
予想外の日本の登場に嫌な予感がする。



「お二人揃ってどうされたんです?」
「今日はね二人でショッピングの約束してたの」
「そう!二人でぜ!!」
「そうなんですか」



『二人で』を強調してみるものの日本は依然として微笑んでいる。
彼の微笑みは穏やかだが、その笑みは意味深だ。
だいたい、偶然待ち合わせしていたところにこうタイミング良く現れるなんて話が良すぎるようにプロイセンには思えた。



「‥そんなに睨まないでください。時間潰しに散歩をしていただけですから」
「そうかよ」
「日本、暇なの?だったら俺達と一緒に遊ぼうよっ!」
「え?!ちょ、イタリ‥」
「私なんかがいいんですか?」
「当たり前じゃん!」


自分を置いてどんどん進んでいく話に慌てて反論しようとすると、不意にねっプロイセン!と最上の笑顔で振り返られ、つい頷いてしまう。
そして間抜けなことに頷いてから事の重大さに気づく。


(日本が俺達に付いてくるって事は)

(俺とイタリアちゃん、ふたりっきりじゃないって事で)

(それってつまりもしかしてデートじゃない!?)


「マジかよぉ・・」


嬉しそうに『やったやったー!みんなで買い物だー!』とはしゃいでいるイタリアの手前、今更嫌だとは言えず一人その場に打ちのめされてうずくまる。
楽しみにしていたぶん、ショックは大きかった。
座り込んで動かないプロイセンに日本がクスリと笑い、身をかがめて耳打ちする。



「あんまりずっとショックを受けてらっしゃるようだと美味しい所、全部頂いてしまいますよ?」
「は?」
「たとえば手、とか」


そういって日本は立ち上がり、いきなりうずくまってしまったプロイセンを心配そうに眺めていたイタリアの手をとった。
そして自分の指とイタリアの指を絡め恋人つなぎにする。



「ヴェ?」
「ってめぇ!それは俺の・・」
「イタリア君には手が二つありますね」
「?当たり前だよー変な日本」
「ではそろそろ行きましょうか?」


またあの笑みを零す日本にチッと舌打ちをして立ち上がった。
そしてイタリアの横までずかずかと歩み寄り、日本と手を繋いでいない方の手を取って絡める。



「さっさと行くぞ!」
「なんだよープロイセンがうずくまってたくせにー」
「ふふ、そうですね」


end

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