Ein Roman

□Siesta
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「いい天気だねー」
「ええ、そろそろ秋めいてきましたからね」


青空に広がる羊雲を縁側で見上げながら呟くイタリア。彼の隣には家主である日本がほほえましそうに彼を見ている。
イタリアは口には煎餅、左手にはオレンジジュース、右手にはゲームを持つという、驚異の体制でごろごろと寝そべっていた。
正座に湯飲みの日本とはまるで正反対である。

そのだらし無いポーズは口喧しいドイツが仕事でいないからこそできる格好だ。
日本も他の人(アメリカとか)がやっているのであれば「みっともない」と注意するところだが、彼だとその欲張りな体制もなんだかとても可愛らしく見えてくる。



前々から約束していたイタリアが遊びに来ると丁度台風の季節であるというのに驚くほどに空はすみわたっていた。
その天気が日本の、この温かい気持ちに関係しているのかは知らないがやはり晴れた空は気持ちがいい。
ぽかぽかとした過ごしやすい気温に、日本の膝の上の猫も心地よさそうに瞼を閉じている。

少し冷えた風とかちかちとゲームのボタンの音だけがしている。
しかしその沈黙も日本にとっては居心地が悪いものでは無く、むしろ気持ちのいいものだった。



ふとイタリアがゲームから顔を上げ、小さく欠伸をする。時計を見るとちょうど3時になっていた。
クシクシと幼げな動作で目をこするイタリアの頭を日本が優しく撫でる。


「ちょと待ってて下さい。今ふとんをしきますから」
「ん・・、ありがとー」


もう寝てしまいそうなイタリアに急いで布団をしいてやる。
夏までなら縁側で寝るのも良いが肌寒くなった今、こんなところで寝かせてしまっては風邪をひかせてしまう。


「イタリア君、しけましたよ。こっちで寝てください」
「ヴェ分かったー。日本も一緒に寝よ」
「え?」
「早く早く」


布団の隣を明けて期待のまなざしでこちらを見るイタリア。
その様子を日本は少し驚いたような表情をして、ついでくすりと笑って頷く。




「日本とシエスタするの初めてー」
「そうですね、こうやってたまには昼寝をするのもいいかもしれません」
「日本も毎日やると・・いい、よ・・」
「イタリア君?」
「・・・」


返事が無い。どうやらもう寝てしまったようだ。
閉じられた瞼を指で優しくなぞる。

一人との時より温かい、布団の中の温度に日本もだんだんと眠りに落ちていった。


end

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