Ein Roman

□幸せを運ぶ君
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「イタちゃん、ほんまかわえぇー」


すよすよとシエスタをするイタリア。

その隣に座り、彼の頭を撫でながらニヨニヨするスペインははたからみたらただの変態だ。




トマトの収穫をロマーノと手伝いに来てくれたイタリアは先程まではバタバタと一生懸命にスペインを手伝ってくれていた。
一緒に来たロマーノはといえばいつの間にやらいなくなっており、おおかた街でナンパでもしているのだろう。

しかし、働いてくれていたイタリアも三時になったとたん電池が切れたようにぱたりと寝てしまったのだ。
しかしそれも慣れたものでスペインは寝ているイタリアを木陰まで運びこんだ。






「天使の寝顔やんなぁ」


寝ているイタリアの頬を触るとフニフニと柔らかく、気持ちがよかった。
その感触に取り付かれたように頬を突いているとさすがにイタリアも寝心地が悪そうに「ふにゃ‥」ともらした。
不意に胸がばくりと高鳴る。運動をしているわけではないのに鼓動はドクンドクンと早鐘をうち、体中の血が顔に上ってくるようだ。
ほてった顔を冷まそうと、手でパタパタと扇ぐ。



改めてイタリアをみるとやっぱりとても可愛いと思う。長い睫毛に、白くてすべすべの肌。華奢な体は成人した男のものとは思えない。
ロマーノと似ているていってもやはりどこか違うイタリアの顔。兄弟といってもやはり違う。




(だいたいイタちゃんはロマより気ー使える子やしな)


どこかに行ってしまっているロマーノを思い出し、ついため息が漏れる。
まぁあれでも可愛い子分だ。自分は彼にたいがい甘いと感じるが、やはり初めて出来た子分というのが大きいのだろう。
しかしイタリアは違う。イタリアに感じる胸の高鳴りはロマーノに感じる親愛とは違うのだ。

ロマーノは何処にもお嫁に行かせたくない、つまるところ娘のようなものだが、イタリアはなんか違う。

いうなれば――



「俺んとこにお嫁に来て欲しいわー‥」


そう、それなのだ。イタリアに感じるのはロマーノには感じない、独占欲や性欲。激しく、醜く、切ない、愛。大好きなんかじゃおさまりきらない愛情。

その事実に一人苦笑する。



「兄ちゃん、俺にお嫁に来てほしいの?」
「ふぉわっ!!イ、イタちゃん起きとったん?!」


突然寝ていたはずのイタリアに声をかけられ、飛び上がってしまう。
体を起こし、まだ眠たいのか目をくしくしと擦るイタリアに先の独り言が聞かれていたことに焦る。



「イ、イタちゃん!さっきのはな!」

「俺、スペイン兄ちゃんのお嫁さんならなってもいいな〜」
「え?」



その衝撃発言に口をあんぐりと空けた。ニコニコと笑うイタリアについ真偽を問う声が震える。
ニコニコと微笑むイタリアの方をがっしりと掴む。


「‥イタちゃん、ほんまに?」
「うん!俺、スペイン兄ちゃん大好きだし、兄ちゃんのお嫁さんになったら毎日トマト食べ放題だもん!」
「毎日どころか毎分、毎秒食べさせたるからお嫁に‥」
「行かすかアホ!!」
「ぅおべ!!」


後頭部に強い衝撃を受けてうずくまる。涙目になりながらずきずきと痛む頭を押さえて振り向くと、いつのまにか帰ってきたロマーノが仁王立ちでたっていた。



「痛いやんか〜」
「うるせぇ!人がいない間に馬鹿弟になにしてんだこの野郎!!」
「まだ何もしてないやん!」
「しようとしてたのかテメー!!誰の了解とって・・」
「義理兄さん、俺にイタちゃんを・・」
「やるわけねぇだろーが!俺のヴェネチアーノだぞ!!」
「なんでロマのなん!?イタちゃんはみんなのものやろ!」
「んなわけあるか、ボケ!ヴェネチアーノは一万年前から俺のもんなんだよ!」
「ロマのもんは親分のもんやろ!?ってことでイタちゃんは俺のもんやな!」
「さっきみんなのもんとか言ってたじゃねえか!この鳥頭!」
「ロマ!親分にそんなこと言うたらあかんやろ!だいたい今までどこいっとったん!?」
「ヴェネチアーノのためにパスタ買ってきたに決まって、る・・だろ、うが・・」
「ちょっ、イタちゃん・・?」



ついさっきまで起きていたはずのイタリアはもうとっくに夢の中の住人と化していた。
隣で自分の所有権が話し合われているというのにのんきなものだ。

涎を垂らして眠るイタリアの幸せそうな寝顔についロマと顔を見合わせ、吹き出してた。
そしてそのまま自分たちも彼の隣で寝ころんだ。



(幸せを運ぶ君、)

end

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