Ein Roman

□彼の怒り顔
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彼と自分の関係ははっきり言ってしまえば微妙。
敵同士だし家は遠いしそんなに喋ったこともないし。つまるところたいした関係とはいえなくて。

でもいつだって仲良くなりたくて、でもきっかけがないわけで。





「中国、お願いがあるんだ」


だから上目使いでそんな事を言われた日にはお願いの内容すらも聞かずにすかさず首を縦に振った。



****



「あ、いらっしゃい中国!待ってたよ」
「し、失礼するある」


嬉しそうにヘラリと笑って出迎えてくれるイタリアにドキンと胸が高鳴る。

一昨日、くだらない進展の無い会議が終わり、いつものようにさっさと帰ろうと片付けをしていると急に駆け寄って来たイタリアに頼みごとをされた。
『中国料理の作り方を教えてくれ』、と。

もちろん外ならぬイタリアの頼みだ。快く引き受けたし正直、嬉しかった。
自分に頼み事をしたくれたこともプライベートでイタリアと会えることも全てが中国の心を浮足だたせた。



しかし――



「‥‥なんでお前らがいるね?」


イタリアの家で何故か寛いでいる面々を目にした途端、ズドーンと音がするかと思うほどにテンションが一気に下降する。
ソファーに座り紅茶を啜っているあへんも、ハンバーガーを貪り食うメタボも、股間に薔薇を咲かせる変態も、骨太も、元弟も、全くもって予定外だ。


悠々と寛ぐ彼等を恨めしく睨むと何故かカメラを首から下げた日本にニッコリと笑いかけてきた。



「実はイタリア君があなたに教えてもらって中国料理作るって聞いたものですから」
「‥それとここにお前らがいる理由に何が関係するね?」
「見張りにきたんだぞ!」



アメリカの言葉にうんうん、と頷く目の前の面々に背を向け眉間をおさえる。
その様子を見るイタリアな不安げ視線に気がつき、心配をかけまいと笑ってみせた。



「じゃっ料理、作るあるか!」
「うんっ」
「「待ってました!」」



後ろの彼等のテンションの上がりように正直、中国を見張りにとかではなくただイタリアの料理が食べたいだけではないかと疑わずにいられなかった。

そこでイタリアが回りを見渡しふと気がつく。





「あれ?ドイツは?」
「「!!?」」


ドッキーンと古めかしい音が聞こえる程に急に日本達の動きか止まる。ぎこちない動作でイギリスが口を開いた。



「ドイツはー‥あーあれだ‥腹痛とかで‥な、髭?」
「そ、そうそう!めっちゃ冷や汗とかかいて‥今日はこれない、みたいな‥」
「ドイツ君は今頃家じゃないかなー?」



どう見ても様子のおかしいフランス達の反応にイタリアはそっかー、と納得してしまったようだ。
しかしイタリアの表情は先より暗く、ドイツの欠席が相当ショックだったように見える。

正直、中国にとってもドイツは恋敵であるわけだからいないほうがいいに決まっている。が、イタリアにこんな表情はさせたくないのだ。



「じゃ料理、はじ‥」
「お前達、ドイツに何したね?」
「え?」



イタリアが驚いたように中国をみた。他のもの達も目を見開き中国を見つめる。
先進国相手に何をしているんだと自分でも思う。しかしこれも全て後ろに立つ、イタリアのためなのだ。




「な、何いってるんだい?」
「ドイツのことね。日本、答えるある」
「うっ‥その‥私は反対したのですが‥じ、実はドイツさん」
「家のトイレだよ。強力な下剤を飲ませたから二、三日はトイレから出てこれないんじゃないかな」



ね、僕は嘘ついてないでしょ?と笑うロシアにイギリス達が表情がひくっと引きつる。
おおかたイタリアと一番仲の良いドイツをまず脱落させようといいったような魂胆だったのだろう。

ふっと後ろに立つイタリアに目をやる。



「っ‥!?」



イタリアは眉間にシワを寄せ、いつもは垂れている眉をきゅっと上げていた。心なしか特徴的なくるんとしたくせ毛もぴんとたっている。

初めてみたその表情につい驚いてぽかんと口を開けてしまう。
びっくりしているとイタリアがずんずんとイギリス達の前に進み出た。




「みんな何でそんな事したの!?」


そのイタリアの怒鳴り声に自分が怒られているわけではないのについ、びくっと方が跳ねる。
イタリアの怒鳴り声はドイツの怒鳴り声などに比べるとはるかに高く、威厳はなかった。しかし彼の声にはどこか有無を言わさないなにかがある。


「イ、イタリア・・?」
「駄目でしょ!!下剤なんて飲ましちゃ!」
「だ、だってさ」
「だってもくそもない!今すぐみんなドイツに謝りに行っておいで!そうじゃなきゃみんな一生口聞いてあげないからね!」



イタリアが言い終わるか終わらないうちに寛いでいたイギリス達は全員が猛スピードで玄関に向かい、ドイツの家に走った。

必要的に家に残ったのはイタリアと中国だけ。中国はあまりの展開の早さに動けずにいた。
皆が家から出ていったのを確認すると前に立っていたイタリアがくるりと振り返った。

その顔には先程の表情は微塵も残っておらず、イタリアは未だに動けずにいる中国にてこてこと歩み寄った。




「中国ありがとうね!」
「あ、い、いや当然のことをしたまである!」
「そんなことないよ!凄くかっこよかった!!」



本当にありがとう、そう言って微笑むイタリアに胸がドキドキと高鳴る。

そして内心で今、必死にドイツに謝罪してるであろう彼等と腹痛でトイレに閉じこもりきりらしいドイツにひっそりと感謝した。



(「さてあつらが帰ってくる前に料理するあるか!」)
(「うんっ!とびきり美味しく作ろうね!」)

end

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