Ein Roman
□一人がお好き?
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小さな頃から色んな人に支えられ、守られ、囲まれて生きてきた俺はスキンシップが好きで一人が嫌いだ。
勿論、搾取されたり強奪されたりもしたけどそれでもやっぱり一人きりは好きじゃない。
でも、俺の好きな人はどうやら一人が好きらしくて――
(ヴェーどうしよ‥)
家を出てから40分。彼の家の前で立ち往生すること25分。
まだ俺は彼の家の扉に手をかけることが出来ないでいた。
今日は思い人である彼が家に一人でいるという情報を彼の弟であるドイツから聞いてわざわざケーキを焼いて持ってきたのだ。
それがどうして、立ち往生しているのかといえば――
(一人が好きなら俺、迷惑かなー‥)
そう、俺の好きな人は一人が好きらしい。
暇さえあればいつでも「一人楽しすぎる」と笑っているほどなのだから相当好きに違いない。
一人が楽しいという感覚は自分には理解できないが、もしいま折角の一人を満喫しているのであれば自分は邪魔なのではないだろうか?
手に持ったケーキに目をやる。作りたてのそれはまだ触ると温かい。
それを差し出したとき、彼に嫌な顔をされたら・・想像しただけで泣きそうになる。
(帰ろ・・)
小さくため息をつき帰路につこうとくるりと後ろを向いたその時、いきなり背を向けたばかりの扉が開いた。
「え、イタリアちゃん、帰っちゃうのかよ!!?」
「プッ、プロイセン!?」
「あ」
扉からとびでてきたプロイセンに呆気にとられ目をまるくさせる。
動けないでいるとプロイセンが罰の悪そうな顔で頭をかいた。
「・・ずっと俺ン家の前にいたからてっきり用があるんだと・・」
「見てたの?」
「まぁ・・気になって」
かああぁぁ、と顔に熱が集まる。
25分もの間家の前にいたことを見られた恥ずかしさと、なんの目の前に好きな人がいることで俺の羞恥は最高潮だった。
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
その沈黙を始めに破ったのはプロイセンだった。
「その手に持ってるのなんだよ?」
「へ!?あ、これは・・」
「あ、ケーキじゃん」
反射的に後ろに隠そうとする手を捕らえられ、ケーキを奪われる。
もともと彼に渡すつもりだったのだから『奪われた』というのはおかしいのかも知れないけど。
なんとなく気まずくて下を向く。
「これ、どうしたんだ?」
「・・・プロイセンにあげようと思って作ってきたの」
「嘘!?俺に!!?ヴェストじゃなくて!?」
「うん、でも迷惑かなぁ、って思って・・」
「んなわけねえよ!!すげぇ嬉しい!早速中入って食おうぜ!」
「え?」
その言葉に顔を上げると、プロイセンの満面の笑顔にぶつかった。
不思議に思って質問する。
「俺がいて良いの?」
「当たり前じゃん!イタリアちゃんほっぽって一人で食うわけねえよ」
「一人が好きなんじゃ・・?」
「一人が好きな奴なんていねぇよ!」
その言葉にポカンと口を開ける。どうやら自分は勘違いをしていたらしい。
先までの自分を思いだし、笑えてくる。
くすくす、と笑っているとプロイセンが不思議そうに俺をみた。
その視線に気が付き、彼に向かってにっこりと笑いかけた。
「さっ!中に入って早く一緒にケーキ食べよう!」
end
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