Ein Roman
□I fell in love
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(女の子みたいだなぁ)
ドイツの会議を進行する声が遠くから聞こえる。ドイツの声だけじゃない。イギリスが野次を飛ばす声も日本が制止する声も中国が菓子を薦める声も全部がただの雑音にしか聞こえなかった。
いつもならアメリカも混じり、一緒に騒ぐはずだ。しかし今、そんな事をしている暇はアメリカには無かった。
(本当に男なのかな?男にしては目大きいし可愛いし細いし‥)
斜め前に座るイタリア。
会議が始まる前から大爆睡している彼は特にアメリカとの係わり合いが深いわけでもなく、どちらかといえば疎遠なほうだ。
だというのに会議が始まってからずっとその彼から目が離せないのだ。
勿論寝ているイタリアを見るのが特に楽しいというわけでは無い。が、何故か彼から目が離れない。
(よく食べてるのになんであんな細いんだ?)
(ピッザとかパスタとか)
(あ、そういえば会議でもなんかいつも何かしらを食べてるのに‥)
今日は一度も食べてないな、と思った矢先にイタリアの腹が驚くほどの轟音をたててなった。
一瞬、場が静まり返り部屋にいるすべての者がイタリアを見つめる。
寝ていたイタリアもさすがに自分の腹が鳴っただけあって眠たそうに目を擦りながら起きた。
「ん〜‥あ、みんなおはよう!」
「何がおはようだイタリア!!今日の朝も散々寝坊したというのにまだ寝足りないのか?!」
うわーごめんなさぁい!!とドイツに謝るイタリアをアメリカを含め皆が失笑しつつも内心、ほほえましい気持ちで見守っていた。
一通り怒ったドイツがまた会議を再開するとイタリアはけろりとした顔で席に座る。
そしてさっき腹が鳴ったことを思い出したのか腹に手を当てながら隣に座る日本に話しかけた。
「お腹減っちゃった〜、日本なんか食べ物持ってない?」
その高めの声だけが会議の雑音の中でひとつだけ、アメリカの耳に響く。
そして考えるよりも先に行動していた。
「ハンバーガー、いるかい?!」
いきなり立ち上がり、ハンバーガーを突き出すアメリカに周りの者は驚いたように目を見開く。突き出された本人、イタリアはすこしびっくりした顔をしてから嬉しそうにへにゃりと笑った。
「ありがとう、アメリカ」
その瞬間、アメリカは恋に堕ちた。
end
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