Ein Roman

□プライベートビーチ
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真っ青な空に白く雄大な入道雲。広く何処までも続くような海に太陽の光を反射させてキラキラと光るビーチ。

目の前に飾られた夏らしい向日葵が嫌いな骨太を思い出させて気分が悪いが、基本的にはとてつもなく夏らしく清々しい景色だ。




「どうだい、俺のプライベートビーチは!プライベートビーチは!!」
「プライベートビーチを強調すんな!」


テラスの隣の椅子に座るイギリスにむ、と睨まれる。

今イギリスと二人で来ているビーチは俺のプライベートビーチでほんの10年ほど前に買ったものだ。
ゴミひとつない美しいその景色を気に入って買った。その美しさは今も健在で目の前に悠然と広がっている。



「で、ご感想は?」
「ま、まぁまぁだな」
「えー!最高じゃないか、俺のプ・ラ・イ・ベ・ー・トビーチ」
「だからプライベートを強調すんなっつってるだろーが!うぜぇ!」
「よしイギリス!こんな所で海眺めてるだけじゃなくて泳ぎにいくんだぞ!」



隣でギャンギャンと騒ぐイギリスの腕をとり、姫抱っこをする。



「ぅおわっ?!ちょ、降ろせ馬鹿ぁ!」


腕の中で暴れるイギリスを抱えながらテラスを飛び降りた。
着地した足場の砂がしゃり、と小気味よくなる。



「んー気持ち良いね!!さすが俺のプライ‥」
「しつけぇよ!!つかもう離せ!」



殴り掛からんばかりに睨み付けるイギリスを渋々ながら浜辺におろしてやる。
やっと地に足のついたイギリスはわざとらしくため息をつき、無言でこちらを睨んできた。先のお姫様抱っこが相当気に入らなかったらしい。



「お姫様抱っこぐらいいいじゃないか。俺達以外誰がいるわけじゃないんだし」
「そーゆー問題じゃねぇ!だいたい俺は男だぞ!」
「知ってるぞ?」




素っ気なく切り返すとイギリスがその答えが意外だったのかいや、だから‥と言葉をつまらせた。

返す言葉をうんうんと思案するイギリスの顔におもむろにに手を伸ばす。イギリスが大袈裟な程に飛び上がった。



「っな?!」
「こんな可愛くて細くてさ色っぽい人、女の子なわけないじゃないか」
「意味わかんな‥っぉわ!」



ドンッと肩を押されてバランスを失ったイギリスが砂浜からバッシャーンと派手な音を立てて海の中にひっくり返った。
そのまま自分も彼の上にダイブする。



「ってめーっ!!何しやがる!?」
「ほら、自分の姿見てみなよ。すっごくエロいぞ」
「なっ!?」


咄嗟に自分の体を隠そうとするイギリスの腕を遮り、悔しそうに見上げる彼に意地悪く笑ってみせる。


「隠そうとするってことは自分でもエロいと思ったんだ?」
「ち、違っ!ば、ばかぁ!!」
「っ!」


耳まで真っ赤にして俯く姿は実際、かなりエロい。
海水で濡れたシャツが透けて体にぴっとりとくっつき、髪は額にはりついておまけに炎天下のせいか頬は上気して真っ赤になっている。

その姿を改めてみてつい唾をごくりと飲み込む。

正直ふざけて半分だったがこんな姿をみせられて黙っていられる程俺は大人じゃないし、大人になってやるつもりもなかった。



「いい加減に腕離せよ!」
「・・・ねぇイギリス」
「な、何だよ?」
「プライベートビーチの利点ってなんだと思う?」


その唐突な質問に腕を捕まれたままイギリスはその緑色の大きな目を点にした。



「急になんだ?」
「いいから」
「・・利用客が自分たち以外いない事とかか?」
「うん、ということで頂きます」
「は!?ちょ・・、ゃ、何!?」
「いいじゃないか、誰もいないんだし」
「いいわけがねーだろうがぁぁああ!!!」



ばっちーんっ、とその美しい景色に似合わない俗世的な音は頬を真っ赤に張らした俺にうち寄せる波によってかきけされていった。


end
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