Ein Roman
□忘れてた矛盾
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『中国四千年の歴史』と呼ばれるだけあって長く生きてきた。
他の国より多くものを見てきたし、してきたつもりだ。
そのせいか最近では並大抵の事では驚かなくなったし悲しまなくなった。感情が鈍くなってしまったのだろう。
『楽しい』と感じることも少なくなれば、『悲しい』と感じることも減った。その事実は辛くもあったが楽でもあった。
(だっていうのに何アルかこれは!?)
目の前で笑うイタリア。
ニコニコと屈託のない表情の彼にどうしてか冷静さが保てない。
言葉はしどろもどろ、手は汗ばむし目は泳ぐ。意識すれば意識するほど冷静さからはかけはなれていく。そしてそんな自分にまた焦る。
「中国」
その優しい声音で紡がれた字の羅列を耳にするだけで胸は大袈裟な程に飛び上がるし体中の血が全て顔に上ってくるような気がした。
恥ずかしくて急いでそこから逃げ出してしまいたくなる。やっと彼から離れると今度は馬鹿みたいに目でイタリアの姿を捜す。
他の誰かと喋っていたら自分を見てくれと叫びたくなり、目があったらあったですぐそらしてしまう。
(我は何がしたいネっ?!)
頭がパニックになりながらも視線だけはイタリアへ。
(意味わからないアル!なんでイタリアを見なきゃならないネ!?別にいつも通りイタリアは可愛くて優しそうで細くて色白で‥‥、じゃなくて!)
ぐるぐると考えを巡らせてもでない答え。矛盾した自分の行動と反応。
イタリアにだけ感じる、この心地よいような気分の悪い感情。
『恥ずかしい』『嬉しい』『悲しい』『楽しい』。忘れてた感情がいっきに胸に溢れて混ざり合う。
嬉しいような悲しいような、辛いような楽しいような、泣きたいような笑いたいような、そんな矛盾だらけの気持ち。
そしてその混ざり合った感情を世は何と呼ぶのか?
それを歳を重ねすぎた中国が思い出すのはまだ少し先の話。
end
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