Ein Roman
□終戦
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暗い部屋にぴちゃりぴちゃりと血の滴る音が響く。
その音を掻き消すように荒い息が聞こえる。
「とうとう、ですか‥」
片手に持った刀を地面について体を支えた状態で呟く。腕から流れる血が刀を伝って地面に溜まる。
白かった筈の軍服も今では真っ赤に染まって白い所など少しも見当たらない。
「まぁ老体にしては頑張った方ですね」
頭からの血が目に入り、袖で拭う。はぁとため息をつき、ズルズルと床にもたれながら地面に座り込んだ。
その拍子に懐からひらりと一枚の写真が落ちた。
「っ‥」
楽しげにピースをするイタリアに眉間に皺をよせているドイツ、真ん中で恥ずかしげに笑う自分が写ったその写真。
この時はこんなことになるなんて思っても見なかった。
ずっと友人と愛する人とともにいられるものだと思っていた。
しかし今では友人はボロボロになるまで戦い、上司が死んだことで負け、愛する人は兄により連合に連れ戻された。
「私もこの有様ですか‥」
ぽたりと涙が写真に落ちる。閉じた口からうっうぐ、ひっと鳴咽が漏れてしまう。
「‥っごめんなさい、私ももう・・っ」
何百年ぶりに流れた涙と共に零れた言葉は湿った暗い部屋に静かに消えた。
end
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