Un romanzo
□どっちも
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「ん‥」
いつもより固い寝心地に目を覚ます。不自然に床が近い。そこでやっと自分がどこににいるのかに気がついた。
(日本ん家にお泊りしてたんだった‥)
現在地を忘れていたなんてドイツに言ったら「軍人としての意識がたりん」と叱られそうだ。
くんっと畳の草の匂いをかぐ。なんとなく落ち着く香だ。
ふと隣を見ると一緒に寝たはずの日本の姿が見当たらず、かわりに彼が寝ていた所には布団は小さく畳んであった。
「どこかな‥?」
少し開いている襖に手を差し込んで開く。突然の眩しい光に目を細める。
襖の外は自分の庭に比べ、落ち着いた雰囲気の庭が広がっていた。その真ん中には着物の上を脱いだ日本が竹刀を振るっていた。
(すごい‥)
剣を振り回している日本につい目を奪われる。
いつもよりキリッとした表情に額には汗が浮かんでいた。着物を脱いでいる上半身は思っていたより鍛えているようで腹筋が見事に割れている。
「かっこいい‥」
いつもの柔和な雰囲気とは掛け離れたその日本の姿につい、声がでてしまった。
「あ、イタリア君。おはようございます」
こちらに気が付いた日本は素振りをやめて近づいて来た。日本が素振りをやめてしまったことに少し残念と思う。
どうかしましたか?と尋ねる日本に慌てて我に返る。
「起きていたなら一言声をかけて下さればよかったのに」
「ううん、楽しかったよ!」
「私の素振りが、ですか?」
「うん!かっこよかった!」
ニッコリはにかむと日本が照れたように俯いた。先程の逞しい感じはもう見られない。
(でも俺、どっちの日本も好きだなー)
少し汗ばんだ手を繋いで俺達は少し遅い朝ご飯を食べに家に戻った。
end
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