novel
□いつか必ず!
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「ねぇねぇ兄ちゃん、兄ちゃんって好きな人いる?」
「はぁ?!うぉっ!」
つい持っていたトマトを落としてしまいそうになった。
弟とはいえ好きな相手にそんな事聞かれたら、慌てる。
「きゅっ、急になんだよ?!
あっまさかお前好きな奴が‥」
「違うよー、ただなんとなく気になって」
ねぇいるの?と尋ねてくるヴェネチアーノの上目使いが不覚にも可愛くて抱き着きそうになるが、
そこは理性(とプライド)でなんとか押し留まる。
可愛すぎだろ、こんちくしょーがっ!
「おっ、お前には関係ないだろっチクショー!///」
流石にお前だ、とはいえない。
えーっとブーイングするヴェネチアーノの額をこつんと優しく小突く。
「そーゆーお前はどうなんだよ?」
「えー俺ぇ?」
うーん‥、と考えるヴェネチアーノ。
俺と同じ色のはずの紅茶色の髪が太陽の光を反射していやに綺麗に見える。
(もし‥ヴェネチアーノが好きなのがジャガ芋野郎とかだったらどうしよう‥
いやスペインって可能性も‥あの髭野郎ってことだって‥)
もし自分以外の誰かを好きになっていたら‥
嫌、俺の事を好きな可能性は極めて低い。
(あいつにとって俺はただの“兄ちゃん”だもんな‥)
フランスやスペインとは違う。
本当の兄。
近くて遠い兄弟という繋がり。
(なんで兄弟になんて‥)
目の前にいるのにきっと手に入らない弟。
いきなり悲しくなってきた。辛い‥。
目尻に浮かんだ涙を拭おうとした瞬間、
「えっ兄ちゃん、泣いてるの?!」
俺より少し高めなヴェネチアーノの声が降ってくる。
俺はばっと顔を背けた。
泣いているのを見られたのが悔しくて情けない。
「泣いてねーよっチクショーが!!」
ぐしぐしと乱暴に袖を拭っているとヴェネチアーノの指が俺の頬に触れた。
白くて細い綺麗な指。
「そんなに擦ったら目が傷つくよ」
思ったより冷たい手にドキマギしていると兄ちゃん顔赤ーいと茶化された。
その笑顔の美しくて眩しいこと!
瞬間、その優しい笑顔を守りたいと思った。
衝動のままに抱きしめる。
理性やプライドなんてしったことか。
腕のなかで慌てるヴェネチアーノの額に優しくキスを落とす。
弟だろうがなんだろうがもう気にしない。気になんてできない。
こんなにも愛してるんだから。
大事な大切な俺の弟。
兄弟だろうが男同士だろうがいつか絶対手に入れてやるからな、
待ってろヴェネチアーノ!
end
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