少年陰陽師

□甘い話[チョコ]は如何?
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昌浩←彰子&(玄武?←)太陰

昌浩にとっては物の怪の様に太陰にとっての相棒―玄武は晴明の命により、不在。

其の為、相手がいない太陰は暇を持て余していた。

「どうしようかしら…ん?」

屋敷をうろついていた彼女の鼻孔にふんわりとした甘い香りが届く。

「良い匂い…此れは、台所の方からね――」

ふらふら〜と引き寄せられる様に太陰は行ってみると、其処ではエプロンを付けた彰子が何やら真剣な顔付きでボウルの中を覗き込んでいた。太陰の存在にもまだ気付いていない。

「彰子姫、何をしているの?」

「きゃっ…」

太陰が不思議そうに声を上げると彰子は初めて近くに人が居る事に驚いた様な顔をした。

「た、太陰…びっくりした…」

彰子は一度小さく息を吐き出すと、太陰に説明をする。

「此れはチョコレートよ。太陰も食べた事が有るでしょう?」

「ええ。私の口には合わなかったけど、凄い甘くて…一瞬、砂糖の塊かと思ったわ――で、其れがどうかしたの?」

彰子は少し恥らう形で微笑む。

「今日は、女の子が男の子にそのチョコレートを渡す日なの」

「へぇ…じゃあ―今作っているのは昌浩に上げるもの?」

「え、ええ…」

太陰は大きく目を見開いた。昌浩と彰子は既に親公認――…というか、平安の時から認められている――の仲ではあるのだが、二人はは未だ告白すらしていないのだ。

古くから贈り物はある特別な「想い」を込めて贈られる物が多い。もしや、彰子は…

「―――告白、するの?」

「!!」

告白。其の一言で彰子の顔は真っ赤に染まった。そんな初々しい姿に太陰の乙女心も反応する。

「えーーーーっ!?本当にするの!?何時?」

「たっ、太陰っ。声が大きいわ…」

「あ。ご、ごめん…」

太陰は慌てて口を閉ざすも瞳はキラキラと輝いている。

彰子はチョコ作りを続行しながら少しずつ話し始めた。

「―今日、昌浩が帰ってきたら…チョコを渡す時に――こ、告白しようかな…と思って…」

「ふぅん」

この時、丁度同時刻に昌浩も似た様な事を考えていたなど…そして其れを偶々遭遇した玄武に相談しているなど、二人が知る由も無い。

「あ!だったら、私も玄武に作ろうかな?」

太陰は笑みを浮かべる。日頃の礼も兼ねて作ってみよう。何より面白そうだし。

「彰子姫。私も一緒にやって良いかしら?」

彰子は振り向き、答える。

「もちろん。一人よりも二人の方が楽しいもの」

――――暫く。二人の少女の楽しげな声が安倍邸に響いたり響かなかったり。



↓おまけ。
――――――――――――
「玄武ー」
「…なんだ」
(露骨に嫌そうな顔をする玄武に駆け寄り小さな包みを渡す太陰)
「…此れは?」
「チョコレートよ。彰子姫と一緒に作ったの。何でも、今日は女の子が男の子に其れを渡す日なんだって」
「ほぅ」
(太陰の説明に少し驚きつつ、包みの中身を口に放り込む玄武)
「…」
「どう?」
「――甘いな」
「当たり前じゃない!チョコレートなんだからっ」
「…『ちょこれーと』とは甘いものなのか?」
「食べた事ないの?」
「嗚呼」
(玄武の返事に何故か笑顔になる太陰)
「じゃあ、今私があげたのが玄武の初めてのチョコなのね!」
「そうなるな」
「やったぁ!」

玄武に初めてのチョコ(因みに手作り)体験をさせられて喜ぶ太陰と甘いと言いつつも食べる手を止めない玄武のとある一部始終。
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