少年陰陽師
□とんぼ玉
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気が付けば昌浩は見知らぬ場所に立っていた。
身には不自然に薄い衣を纏っている。
此れもまた見慣れぬ衣だった。
―――夢?
「…?」
辺り一面、紫色の世界…
訳が分からずきょろきょろと瞳を動かすと、ふと視界の端に何かが映った。
「――…蝶?」
何故、こんな所に…
蝶は妖しい光を放ちながら昌浩の周りを旋回し始める。
昌浩は其の蝶を見つめ続け、そして―――…
何時しか彼の相貌から徐々に輝きが失われていった。
ゆっくりと其の瞼が落とされる。
其れまで昌浩の上で旋回していた蝶は昌浩が崩れ落ちる直前、体を変形させ昌浩に絡み付いた。
――――トラエタ。
――――ツカマエタ。
――――ヒサシブリノ、
――――エモノダ…!!
気を失った昌浩を突如現れた霧が包み込む。
暫くして霧が晴れると、其処には昌浩はおろか何かがいた痕跡ですら残っていなかった。