少年陰陽師
□南瓜妖精
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不思議な事は他にもある。
「おい。お前―――」
「昌浩」
「は?」
「俺はお前じゃなくて、昌浩だ」
「…別に良いじゃねぇか」
「良くないっ」
「…」
鋭い視線が容赦なく紅蓮に向けられる。
「昌浩」と紅蓮に呼ばせるまで、許す事は無さそうだ。
――はぁ…
頭が痛い。
このまま拒み続けても、何の意味も無いのだろうし。
それに―何故だか、この生き物には逆らえない様な気がした。
「…昌浩」
「え?」
「昌浩って、呼べばいいんだろ?」
だったら呼んでやる。
顔を少しばかり紅潮させてそう言った紅蓮を昌浩は呆然と見つめた。
「…意外と素直なんだ」
「悪いか」
「え、全然」
きつかった昌浩の表情がゆっくりと和らいでいく。
「寧ろ、そっちの方が可愛いと思うけど」
「!」
突然の事に思わず紅蓮は昌浩から視線を逸らす。
――流石に不意打ちは酷い…
それと、ここが裏道で良かった…と本気で安堵した。
こんな気持ち悪い顔、絶対誰にも見られたくない。