少年陰陽師

□とんぼ玉
1ページ/16ページ

夜…

都の上で浮遊する男が一人…

異質な空気を漂わせている男の双眸は憎悪の光で彩られていた。

男の視線の先には静寂に満ちた都の道を歩く少年と物の怪がいる。

「………あれが、」

あれが―――安倍昌浩…

男の纏う気がより一層激しさを増した。

「安倍…昌浩ぉ…!!」

荒ぶる感情で作り出された瘴気の蛇が都の空を踊り狂う。

「…兄の仇、取らせてもらう」

―――我が兄、窮奇と嶺奇の仇を…!

男はそのまま呪を唱え、空に不可思議な印を描き始めた。

★    ★    ★

「―――――ん?」

昌浩は首筋にピリピリとしたものを感じた。

後ろを振り返るが辺りには闇が広がるばかり…

「――気のせいかな…?」

急に立ち止まった昌浩に物の怪は訝しげな視線を送る。

「どうした?昌浩」

「…ううん。なんでもない」

昌浩は気のせいだと思い込むと前を行く物の怪の後を追い駆ける。

「さぁて。明日は物忌だから、久々にゆっくり寝られるぞーっ」

「寝る事も大切だが勉学にも励まないとな。晴明の孫」

「うっ……ま、孫言うなーー!!」






――翌日、


――――昌浩は忽然と姿を消した…
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ