少年陰陽師
□とんぼ玉
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夜…
都の上で浮遊する男が一人…
異質な空気を漂わせている男の双眸は憎悪の光で彩られていた。
男の視線の先には静寂に満ちた都の道を歩く少年と物の怪がいる。
「………あれが、」
あれが―――安倍昌浩…
男の纏う気がより一層激しさを増した。
「安倍…昌浩ぉ…!!」
荒ぶる感情で作り出された瘴気の蛇が都の空を踊り狂う。
「…兄の仇、取らせてもらう」
―――我が兄、窮奇と嶺奇の仇を…!
男はそのまま呪を唱え、空に不可思議な印を描き始めた。
★ ★ ★
「―――――ん?」
昌浩は首筋にピリピリとしたものを感じた。
後ろを振り返るが辺りには闇が広がるばかり…
「――気のせいかな…?」
急に立ち止まった昌浩に物の怪は訝しげな視線を送る。
「どうした?昌浩」
「…ううん。なんでもない」
昌浩は気のせいだと思い込むと前を行く物の怪の後を追い駆ける。
「さぁて。明日は物忌だから、久々にゆっくり寝られるぞーっ」
「寝る事も大切だが勉学にも励まないとな。晴明の孫」
「うっ……ま、孫言うなーー!!」
――翌日、
――――昌浩は忽然と姿を消した…