少年陰陽師
□南瓜妖精
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「――だから」
なんでついてくるんだよ。
不機嫌そうな顔を惜しみなく晒すと「彼」も眉間の皺をより一層深めた。
「君があの子に謝るまで!」
―――
出会いは物凄く些細なものだったと思う。
「…」
ただ店先で、ちょっとした「悪戯」をしただけなのに。
「―――聞いてるの!?紅蓮っ」
「あーはいはい」
先程からずっと耳元で聞かされる説教に半ば聞き流す様にして、紅蓮は曖昧な返事をする。
「彼」はそれを見て可愛らしく頬を膨らませる。
「…絶対聞いてないでしょ」
「さぁな」
「…」
「…」
「…何も感じなかったわけ?」
「なにが?」
「…」
紅蓮の返事を聞いた「彼」は深い溜息の後に独り言をポツリともらす。
「―なんで、何も感じなかったのかな…」
「…」
「彼」は紅蓮の耳元に「漂っている」から、その独り言ははっきりと紅蓮にも届いていた。
「…」
紅蓮は少しだけ長めに―歩く事に対してあまり支障が出ない位の長さで視界を閉ざす。
―――俺だって、不思議でたまらない…
何故「こいつ」は、たった一つの…紅蓮の手によって無惨な姿にさせられた一つの南瓜の為だけに。
…ここまでするのだろうか。
不思議で不思議でたまらない。