天 下 覇 道
□耐え難き苦痛と屈辱
1ページ/6ページ
長篠での激闘が終わり、二日ほど過ぎた。
未だに戻らぬ氷澄に小十郎は嫌な予感がしてならなかった。
「(氷澄・・・、まさか捕らえられたのか・・・?)」
そう考えて思考に耽っていると佐助が此方に来る姿が目に入った。
纏う空気は重く複雑そうな表情で・・・。
「竜の右目、アンタに悪い知らせがある・・・」
近付いて来た佐助は重々しく口を開く。
そして、認めたくない現実を小十郎に告げるのだった。
「あの氷澄って嬢さんが明智って奴の手で織田に連れ去られた・・・」
小十郎の表情が動揺に揺れる。
認めたくない、信じたくない、信じられない。あの氷澄が・・・―――
敵に敗れ連れ去られるなど。
グッと拳を握り締め唇を噛み締める小十郎。
甘く見ていた、明智光秀と言う男の事を。
奴も魔王信長の配下で指折りの武将、その事を理解していた筈なのに。