忘れ去られたサイヤ人

□不器用な慈しみ
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故郷の星を亡くしてから、ベジータはフリーザ軍の中で生きた。
以前にも増して、多くの星を攻め、日々戦い続けた。
そんな中で時間を見付け、ベジータはターブルのいる星に一人で向かった。
辺境の惑星で見付けたターブルは、あの頃より成長していた。
「兄さん!」
思わぬ再会にターブルは顔を輝かせて駆け寄ってきた。
その顔にスカウターはなかった。戦闘とは無縁のこの星では装着する必要も無かったのだろう。
そう考えても、ターブルは父王のこと、惑星ベジータのことをまだ知らないだろう。
自分に会えて喜んでるこの顔を、今から曇らすことを彼に教える。
しかしその役目は他の誰でもない、兄である自分がやるべきことだと解っていた。だからこうしてこの星に来たのだった。
ベジータは全てをターブルに話した。

予想通り、ターブルの顔から笑みは完全に消え、見開いたその目には絶望の影が射していた。
「…うそ」
思わず呟いたが、解っていた。兄はそんな嘘を言う人物ではない。
「嘘だ!父さんが…そんな。なんで!? …嫌だ…いや…っ」
涙を浮かべると、崩れるようにベジータにしがみついた。
叫ぶように泣くターブルを抱きながら、ベジータは息が詰まった。
親父…だから、言っただろうが…!!
こうなると解りきった行動を選んだ父に、怒りさえ感じてしまった。
しかし、今はただ全力でターブルを支えるだけだった。


ターブルが落ち着きを取り戻すまでは、当たり前だがかなりの時間がかかった。
赤くなった目でベジータを見上げてきた。
「兄さん…。僕、これからどうしたら…」
その声は胸が痛くなるほど弱々しかった。
ベジータは一呼吸してから、口を開いた。
「お前はここにいろ。スカウターを使っても、通信は誰ともするな。そうすれば、お前も星と一緒に消滅したと思われて、無事でいられるだろう」
ターブルは頷いた。
「…兄さんは?」
「オレは変わらない。戦い続けるだけだ」
それを聞いたターブルは兄を強い視線で見た。
ベジータもその視線の意味を捕らえていた。
「大丈夫だ」
弟の頭に手を乗せた。
「また会える」
「…本当ですか?」
「ああ、だからお前も生きろ」
やがて、ターブルは全てを承諾して頷いた。


星からの帰りのポッドの中、ベジータは決意した。
オレは決して親父のようには死なない。
今は無理でも、必ずフリーザの奴を倒してみせる。
今度ターブルと会う時は、自分が宇宙最強の男となった時だ。








後書き。
うっわ、クッサ!!←自分で書いといて、後書き第一声がそれか!!

『忘れ去られた…』シリーズのターブルくんが、あまりにもないがしろにされていて可哀想に思い(←だから、それもお前が書いたんだよ!)愛されていたバージョンも書いてみたのですが……
なんでこう両極端なものしか書けないんだ、私は……。

「宇宙最強の男となった時…」とか言って、結局カカロットを抜いていないからターブルくんに会いに行けなかったり。
そうこうしているうちにターブルくんの方から来ちゃったり(笑)

あ。ターブルくんが最初は「ちちうえ」と呼んでるのに、後半では「父さん」と呼んでいるのは、私個人の勝手な好みです。ごめんなさい。
小さな子どもが舌ったらずに「ちちうえ」って言うの好きなんです
でも成長したら「父さん」って呼んで欲しいんです←我が儘

相変わらず五歳児っぽくない子ベジ…
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