忘れ去られたサイヤ人

□忘れ去られたサイヤ人 3
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ターブルとグレが着地した星は、優しい緑色をした惑星だった。
降りて周りを見てみると、空も緑色で、地上には細長い植物が生えていた。
ターブルはスカウターを起動させた。
「…この星にも、住人はいるようだ」
顔をしかめながら、グレに言った。
「巻き込みたくはないんだけど…」
スカウターが近付いてくる生命体に反応した。
振り向くと、この星の住人と思われる緑の肌をした者が二人を見ていた。その額には二本の触角があった。
その異星人はターブルを見て怯えているようだった。確かにスカウターから見る戦闘力では、ターブルの方が上だが…。
ターブルは怪訝に思った。
「ま、まさか。フリーザの仲間か…!?」
その異星人は後退りをした。
「フリーザ?」
何故この星の者からフリーザの名が出てくるのだろうか?
そう思っていると、その異星人は慌てて引き返していった。
「あ。待って下さい」
疑問の残るターブルは、彼を追った。
すぐ近くに村のようなものがあった。
近付こうとした途端、先ほどの者とは別の異星人がターブルの前に立ちはだかった。
今度は、彼の方が戦闘力が高い。
「その姿…。やはりフリーザの仲間なのか?」
彼はターブルを睨んだ。怒りと憎しみを感じ取った。「え…ちっ違います!」
この星の者がフリーザ達を快く思っていないことだけは解った。
無理もない。彼らは数多くの星人の恨みを買っているのだから。
「またドラゴンボールを狙いに来たのか!?」
目の前の異星人は、ターブルの返答を真に受けていないようだった。
「ドラゴンボール?」
「もう二度と、この星を破壊させはしない!!」
彼はターブルに飛びかかってきた。
「まっ…待って」
避けようと身構えた時、
「待て!!」
新たな声が、攻撃を止めた。
声のした方を見ると、高齢と解る住人が近付いてきた。
「ムーリ最長老」
ターブルに襲い掛かろうとした者は、解せない眼でその最長老を見ていた。
「何故止めるのです!?」
しかし、ムーリと呼ばれた者は、じっとターブルを見ているだけだった。
「……似ている?」
「え?」
「彼……地球に住んだ、ベジータというサイヤ人に似ていないか?」
兄の名に、ターブルは敏感に反応した。
「兄さんを知っているのですか!?」
「兄さん?」
ターブルはその高齢の住人に駆け寄り、腕を掴んだ。
「ベジータはぼくの兄です!兄を、兄さんをどこで知ったのですか!?」
この瞬間、ターブルの頭からアボとカドのことは抜け落ちた。
ムーリはターブルを見ていた。
「そうか。彼の身内か…」
わずかに表情を緩めたように見えた。


ムーリの話を聞いて、ターブルはやっと理解した。
ここが新ナメック星ということ。兄達がフリーザを倒したこと。そして、今ベジータは地球という星に居ること。
「兄さん達が、フリーザを………」
知らずに笑みがこぼれてしまった。
ついに、サイヤ人がフリーザを打ち負かしたのだ!やはり、兄さんは最強だ!!
「グレ!」
ターブルは弾けるように立ち上がった。
「地球にいこう」


「ターブルの奴、軌道を変えたぞ」
宇宙船の中、アボはスカウターを通してカドに言った。
「寄った星から出たのか?」
「関係ない。このまま奴を追って、目障りなハエを叩き潰そう」
「そうだな。オレ達をこけにした仕返しを味わってもらおうぜ」
二人の宇宙船も、軌道を変えた。


これ以上この星にいて、アボとカドが来たら、迷惑をかけてしまうし。地球にベジータが居るのなら、兄の力で解決出来る。
ターブルはそうグレに話した。
「これで、あの二人を倒せる」
宇宙船の中、二人はまた通信機を通じて話していた。
『……本当の目的はそっちじゃないでしょう?』
グレの声には楽しげなものが混じっていた。
ターブルはグレに見通されたのが解った。
「……うん」
兄に会える。それがターブルを一番突き動かしていた。
「……本当は、兄さんが手を貸してくれるとは、本気で思ってないんだ」
ターブルは語り始めた。
「もしかしたら、会った途端に今度は本当に殺されるかも」
以前ベジータがターブルの居た星に来たとき、彼はターブルを殺そうとしたことがあった。
「でも、それならそれでいい。どっちにしろ、兄さんのいる地球にあの二人が降りた時点で、奴らは無事では済まないだろうし。ぼくも死ぬ前に、兄さんに会えるなら……」
ベジータに会いに行くことは、自分の死に近付くことかもしれない。けれど、その死の恐怖以上にベジータに会えることが嬉しかった。
それくらい、ターブルはベジータに会いたかった。
『私も、お義兄さんに会えるのを楽しみにしているわ』
「うん。……とても素敵な人だから」
ターブルは前に会ったベジータの姿を思い出した。惑星ベジータで最後に会った時より、数倍も王族としての風格を成長させていた兄。今度会ったら、貴方はもっと素晴らしくなっていることでしょうね。
笑みを押さえることが出来なかった。

はるか宇宙の彼方…。
地球へと向かう宇宙船の姿があった…。






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