忘れ去られたサイヤ人

□母親
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王がターブルを追いやると決めた時から、数日が経った。
『王妃!!』
突然王妃のスカウターにリークからの通信が入ってきた。
「なによ、急に!?」
『例の条件を満たす星を見付けたのですが…』
「ですがなによ? というより、スカウターでそのこと話すんじゃないわよ!誰かにバレたら…」
『バレたんです!』
「…え?」
『私達がターブル様の送り先を変えようとしているのが、王の側近達にバレました』
「そんな!」
『今私は王宮から離れたところにいます。ターブル様と離れた今を狙って彼を送り出すという話です』
「それじゃあ、今!?」
王妃はリークの返事も確認せず、宇宙船発射施設に向かって駆け出した。


ターブルは急に、父の側近の二人に呼び止められ、ついて来いと言われた。
「どこ行くの?」
「宇宙船発射施設です」
「なんで?」
「王の命令により、あなたをこの星から追放します」
「え…」
ターブルは思わず足を止めたが、後ろにいたもう一人に押された。
「や、やだ!」
ターブルは踏ん張り、進むのを拒否した。
「手間取らせるな! 出来損ないが!!」
前の大人が、ターブルの腕を掴んだ。
そのまま引きずられそうになったターブルは、目を固く閉じて抵抗した。
「このっ…」
ガンッ!!
攻撃の音がしたと思ったら、手が離れた。
ターブルが目を開けてみると、母の近くに側近の一人が倒れていた。
「王妃!?」
もう一人がそれに驚いたのも一瞬、王妃はその男も一撃で倒した。
「母上!!」
ターブルは考えるよりも先に体が動き、母に駆け寄った。
振り向いた王妃はターブルを見ると、腕を伸ばして小さな我が子を抱きしめた。
「母上ぇ」
ターブルは温かい体を密着させてきた。
王妃は胸の奥がぎゅうっと縮んだように感じた。
嗚呼、やっぱりこの子を消させはしない。
王妃は改めて決意した。
「母上」
ターブルが話しかけてきたため、少しだけ体を離し、目を合わせた。
「ぼく、どこかの星に追放されるの?」
涙の溜まった目で訊いてきた。
王妃は胸が痛くなった。
「…そうよ」
「そんなの、やだ」
ターブルはまた母に顔を埋めた。
「ごめんねターブル。それは止めてあげられないけど」
もう一度、ターブルを強く抱きしめた。
「絶対に、あなたを不幸にはさせないわ」
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