ブラコンZ

□人造人間編A
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未来から来た青年の言っていた5月12日。
ターブルとブルマは早めに南の都の島に来ていた。
島を見渡せる山に飛行機を降ろし、二人は皆を待つことにした。
「ブルマさん、本当にその子のこと誰にも言ってないんですか?」
確認するように訊いてみた。
「そうよ。皆驚くわよ〜」
いたずらっ子のような笑顔でブルマは答え、腕の中の赤ん坊を覗きこんだ。


次に来たのはヤムチャだった。
「よう」
「お久しぶりです」
ターブルはヤムチャに駆け寄った。
「本当に久しぶりだな」
「ヤッホー、ヤムチャ!」
「おう、ブル……」
ブルマに顔を向けたヤムチャは一瞬で固まった。
「………」
しばらくそのままだった。
「何か言いなさいよ」
ブルマの方が痺れをきらした。
「えっと…、お前の子?」
ヤムチャの声に力が入っていない。
「当たり前じゃない」
「えー…っと」
ヤムチャはのろのろと思考を働かせた。
自分の子じゃないことは確かだ。
では、一体誰との…?
視界に入っていたターブルに気付いた。
「そうかそうか」
「はい?」
ターブルの両肩に手を置いた。
「子どもっぽく見えるけど、年齢からいえばお前だってとっくに大人だもんな」
「あの…」
ターブルはヤムチャが勘違いしていると気付いた。
「父親、ぼくじゃないですよ」
否定を込めて顔の前で手を振った。
「……へ?」
「兄さんとブルマさんの子です」
「………………」
たっぷり30秒は反応が返ってこなかった。
「…ニィサン? お前の兄さんって…」
行き着く人物はただ一人。つまり…。
「…え、えぇ―――!ってか、ええぇ―――!!ちょっ、な、え、ええぇぇ―――!!!」
繰り返しブルマやターブル、トランクスを指差して叫んでいた。
「驚きっぷりは見事だけど、ボキャブラリーが乏しいわね」
ブルマはヤムチャの反応を評価していた。

ひとしきり叫んだ後、ヤムチャはしばらく消沈していた。
「まあ、無理もないわね」
「……」
ターブルも、その背中にかける言葉は出なかった。


次に天津飯がやってきた。
「ん…」
天津飯もすぐにブルマの腕にいるトランクスに気付いた。
そしてヤムチャに目を向けた。
「ヤムチャ、これから戦いが始まるんだ。そんなところに赤ん坊を連れてくるな」
「オレの子じゃないから、そんなこと言われてもなー」
ヤムチャのふてくされた声が帰ってきた。
「え…?」
天津飯は、ブルマとその隣にいたターブルを改めて見た。
「…そうか、お前達が。意外だな」
「違いますよ」
ターブルは再びすぐ勘づいた。
天津飯にも真実を伝えた。
「…そうか」
「あら、反応なし?」
ブルマがつまんなさそうに言った。
「もうオレには理解不可能な領域だ」
考えてもしょうがないため、結果だけを受け入れることにしたようだ。
「つまんないわね」


「何人かまとまって来るぞ。悟空達か?」
やっと切り替えが終了したヤムチャが空を見た。
「やっぱりそうだ」
手を振った。
「あれ!?」
到着するなり、クリリン達の視線はブルマに集まった。
「なんで、おめえまでここに来るんだよ!」
悟空がブルマを指差した。
「見学よ。人造人間を一目見たら帰るから」
そう。ブルマはフリーザのとき同様、好奇心でここまで来たのだ。
「オ、オレはブルマさんが抱えてる物体の方に驚いたけど…」
クリリンの表情がひきつっていた。
「ヤムチャさんと結婚したんですね」
「オレの子じゃねーの」
再びふてくされたヤムチャが、悟飯の発言を否定した。
「え…。じゃあ!」
クリリンの視線がターブルに移ったので、ターブルはまた「違う」と言おうと口を開きかけたが、
「父ちゃんはベジータだよな、トランクス」
悟空がトランクスに笑いかけた。
「なんで知ってるのよー」
「そ、そんな気がしたんだよ! ちょっと似てるだろ!?」
「名前まで当たってたわよ」
「ほ、ほんとか? すげーな、オラ!」
悟空はわたわたと言った。
そんな悟空を見ながら、ターブルは考えた。
カカロットさんに未来を見通す力があるとは思えない。きっとカカロットさんは『彼』から聞いたんだ。
ターブルは一人静かに確信した。
「で、そのベジータはどうしたんだ?」
驚きがまったくないピッコロが訊いた。
「知らないわ」
「兄さんは今、ぼく達から離れて修業してるんです」
「でも、そのうち来ると思うわよ」
「来るさ」
悟空が話を引き継いだ。
「あいつはきっと」
その目には確信があった。
「餃子はオレが置いてきた。この戦いにはついていけない」
天津飯が言った。
「ああ、その方がいい」
「あの…」
皆の視線がターブルに集まった。
「ぼくも、戦いには参加しません」
「え?」
クリリンは驚いていたが、悟空はただターブルの言葉を待っていた。
「はっきり言って、ぼくはこれといった修業はしていません。ブルマさんと一緒にすぐに帰ります」
というよりも、ターブルはブルマとトランクスに何かあったらと思い、二人を守るつもりでついてきたのだ。
「でもよ…」
「わかった」
「悟空!」
クリリンは不安げたったが、悟空は理解してくれた。
「ぼくは信じてますから。兄さんや皆さんがこの地球を守ってくれるって」
「ああ…」
悟空はその視線を受け取って頷いた。
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