ヒバツナ
□黒猫と一緒 *
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「全く、困った子」
にー
「はいはい、ご飯だよ」
ネコ缶を出して、食べる様子を見つめる。これがもう日課となってしまっている。
「可愛いな、恭弥は。ねぇ、俺のこと好き?」
わかるはずもないのにそう問えば、まるで返事をするかのように甘い鳴き声を上げた。
「ふふ、ありがと。俺も、恭弥が大好きだよ」
顎の下を撫でてやればゴロゴロと鳴く。擦り寄ってきた恭弥を抱き上げて、額にキスをする。
「恭弥と話せれば、楽しいだろうな」
出来ないことを呟いて、苦笑する。
次第に眠そうに瞼を下げる恭弥に気付いて、ツナは一緒に布団に入る。
拾ってからずっと一緒に寝るようにしていた。
「おやすみ、恭弥」
にー
毎日、彼だけがツナの話し相手。
毎日、この空間だけが自分の居場所。
でも、彼女は淋しいなんて思わなかった。
むしろ、こんな生活が続けばいいと、彼女は思っていた。
「恭弥、お願いだから、何処にも行かないでね」
願いはただ一つ。
それだけだった。
○○○●●●○○○
あったかい
いつもよりも心地よい暖かさのある朝に、ツナは目が開けられないでいた。
寝返りだけ打とうと、不意に力を込める。だけど、動かない。
「ん? な、に?」
何かに拘束されている。そんな感覚だった。びっくりして身体を硬直させて、目を開けた。
真っ黒な肌触りのいい毛並みをした子猫。それがいつもの朝の光景だ。
だけど、今日の光景は少し違った。さらさらな黒い髪の毛と切れ長の目、そして覗く男性の鎖骨。
え、えー!
「な、な、な、何!」
訳が分からなかった。何故自分の部屋に知らない男がいて、しかも裸なのか。
きっちりと布団に入り込んで、更にはがっちりと抱き締めている。
「だ、誰!」
「んー、ツナ…うるさい」
「ひゃあ! ちょ、変なとこ触らないで下さい!」
ってか、何で名前知ってるの!
誰、この人!
って、それよりも!
「きょ、恭弥! 恭弥何処?」
ツナは必死に首を動かして姿が見えない愛猫を探す。だけど、返事をしたのは猫ではなくて…。
「何? 僕ならここにいるけど…」
もぞもぞと動いて起き上がる彼に身体を硬直させる。