ヒバツナ
□飴と恋
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それからというもの狙ってか狙わずか、彼はいつも俺が一人の時に現れて、その度にポケットに入っている飴をくれた。
そんな地道なことするくらいなら一気に渡せばいいのに。そう思いながらも、決して言わない。
ってか言えない。
「はい」
「あ、りがとうございます。雲雀さんも一つくらい舐めてみたらどうですか?」
「いらないから君にあげてるんだ。それとも嫌いなの? この飴」
「いえ、美味しいですよ」
少し引きつりながらも笑うと、雲雀さんはよかったと柔らかく呟く。
まただ。前とは違う。少し穏やかな顔。
その度に、胸が苦しくなる。
「じゃぁ、僕は巡回しなきゃだから」
「あ、はい。頑張って下さい」
いや、できればほどほどにしてあげてほしいです。
風にはためく学ランを見つめながら、次第に治まって行くこの苦しさに安堵する。
一体、俺に何が起きているのか。
どうして雲雀さんにだけ反応するのか、わからない。
ただ、毎日のように会うことが、少しずつだが楽しみになっている気がする。
「恐くないからかな?」
もちろん、群れていれば未だに殴られるが、一対一の時はかなり普通に対応してくれる。
それは彼が俺を一人前として扱ってくれているからかな、と自惚れる。