ヒバツナ

□恋人以上友達未満
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ボンゴレを継いで既に数年の月日がたつ。自分達が中学の時に見た未来とはまた違うとは言え、同じように日本にアジトを建設し始めてもう一年近く。イタリアと日本を忙しなく行き来する彼、ボンゴレ10代目沢田綱吉は、今日本に戻ってきていた。夏の蒸し暑さに汗を流しながらも、久しぶりに感じる自国の空気に微かだが安堵感を覚えた。

「ジャッポーネはいつ来てもじめじめするな」

「いつ来てもは余計だろ。ずっと飛行機の中はやっぱりくたびれるなー。今日は母さんの料理堪能して早めに寝よ」

アジト建設のために日本に帰国しているため、毎回ここには数人の部下しか連れてこない。いつもなら右腕である獄寺か山本どちらかが綱吉の供としてついてくるのだが、今回ばかりはイタリア本部も立て込んでいて出来なかった。仕方なく、綱吉とリボーンという、シンプルかつ最強な二人が身軽に並盛へと戻ってきたのだ。

「お帰り、ツナ」

家に帰れば今年何度目かになる母親の顔が視界に入る。何も変わらない無事な姿を確認するたび、綱吉は笑みをこぼしてただいまと返した。ボンゴレを継いでも彼女はまだマフィアのことを知らないでいる。父親である家光と同じように、奈々には何も知らせず、バレないように過ごしていた。中学時代、あれだけのことを身近でやっていても気づかなかった奈々だ。誤魔化すのは容易だった。しかし、ケガや仲間のことを事細かに聞かれると多少言葉が詰まってしまい、ひやりとすることも多々ある。

「ツっくんももう24ね。そろそろいい女の子とかいないの?」

「ぐっ!?」

予想もしてなかった唐突な質問に、詰め込んでいた天ぷらを喉に詰まらせる。そんな姿を鼻で笑いながら、優雅に食事を取るリボーンが代わりに口を開いた。

「こいつ、当分見つける気ねーぞ、ママン。この前なんて『恋人も、恋も当分いいかな』なんてぬかしてやった」

「まー。すっかり腑抜けになってー! 京子ちゃんとかハルちゃんとかまだ一緒にいてくれてるのに。母さん寂しいわ」

「げほげほ、し、仕方ないだろ! 恋なんて必死になってもできるわけじゃないし! ほ、ほら! 恋は落ちるものじゃん?」

慌てて言い訳を考えて適当なことを言えば、案外効果抜群だったようで、それもそうね! と頬を染めて奈々は自分の恋愛ドラマを語り始めた。両親の恥ずかしいエピソードなど聞きたくもない綱吉は、味がわかる程度に口にご飯を詰め込んで、奈々が恋に落ちる話に入る前に、手を合わせて食事を終えたのだった。





建設途中のアジトを見ながら、経過報告を受ける二人。予定通りの進みに問題は無さそうだった。隣で連動して作られている風紀財団のアジトの進みも確認していれば、そこに施工主である彼も現れた。

「やあ、久しぶり」

「ヒバリさん、お久しぶりです。工事は順調そうですね」

中学と比べてさっぱりとした髪型の彼に、綱吉はすぐに駆け寄る。普段通り、彼の頭には黄色い鳥が一匹。綱吉が近寄ると同時に羽ばたいて、肩に乗ってきた。

「ツナ、コンニチハ!」

「はは、ヒバードもいつも通りだな」

「結構寂しがってたよ、その子。事あることにツナツナって。一回本気で君を連れ戻しに行こうかと考えたくらいだ」

「ヒバリさんが来てくれる、というのはないんですね…」



 
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