獄ツナ
□これがディスティニー *
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No.1 【嵐の守護者】
「喜べ、お前が嵐の守護者として推薦された」
「はぁ?」
場所はイタリア、この世界でもそこそこ名が売れている会社の社長が自分の息子である、獄寺隼人を呼び出して言った言葉はこれだった。
「ちょっと待てよ! いつそんなもんに―――」
「場所は日本だ。行きたがってただろう?」
有無を言わせない表情に隼人は口を結んだ。確かに彼は日本に興味があった。最近は世界でも注目を浴びる会社が増えてきている。
そういった有名な場所に雇われることが夢でもあった。
「推薦されたと言っても、一度主を確認して、その方に気に入られなければならん」
無造作に机の中から取り出して渡されたのは、日本の学校の入学届だった。
「そこにその方はいる。行けばわかるだろう。引き返すことは許さないからな」
学校、ということは隼人と同い年または、一つ上か下か。どちらにせよ拒否は許されないと知って、仕方なく隼人は飛行機に乗って日本へと向かった。
○○○●●●○○○
あぁ、日本って、最悪だ。
ズキズキと痛む身体に顔をしかめて、溜め息をついた。日本に着いた早々、不良に絡まれた。まだ、守護者として認められていない彼は目立ったことをするのはよくない。
仕方なく何もせずに攻撃を受けたのだが、脇に落ちている空の財布を見て、もう一度溜め息をついた。
ぼーっとしていれば、通り掛かる人が慌てて過ぎて行く。誰も厄介ごとに関わりたくはないだろう。
そんなもんだよ。人ってさ…。
失笑して、俯いた。
「大丈夫ですか?」
間近で聞こえた高い鈴のような綺麗な声音に顔を上げる。いつの間に近付いていたのか、ハチミツ色の髪をした少女が心配そうに見ていた。手に持つ濡れたハンカチで傷口に触れて、顔を歪ました。
「痛いですか?」
「………いえ、大丈夫です」
どこから出すのか、次々に消毒液や絆創膏を取り出して、手当てをする。
「これで大丈夫。早く帰って身体休めて下さい」
「あ、あの!」
慌てて呼び止めようと立ち上がったが、その時には既に彼女の姿は見えなかった。
ふと、触れられた口の傷に手を当てれば、痛みどころか、傷すらも無くなっていた。