獄ツナ

□It steals, and it is stolen.
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一の事件 【怪盗ボンゴレ]世】





ここ、並盛高等学校では、ある限られた生徒だけが存在を知る"神の箱"がある。
困ったことを紙に書き、その箱に入れておけば、それが瞬く間に解決する。そんな不思議な箱。


「それって本当?」

「うん。確からしいよ!」

「じゃぁ、私もお願いしてみようかな」


そして、今日もその箱に願いを込めた紙が入れられる。





□□□■■■□□□





午後八時過ぎ。旅行用の大きなバックを担いだ少年は一人、地図が記された小さな紙を眺めていた。街灯の明かりでも綺麗に反射する銀髪を掻き回して、大きく溜め息をつく。
まだそんなに遅い時刻でもないのに、辺りには一人の人間すら見えない。仕方なくバックを担ぎ直して適当な方向へ歩みを進めた。


ファンファン―――


少し歩けば微かだがパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。しかも一台二台ではない。最低五台はありそうなくらい騒がしい音が響いている。
しかも、それはどうやら彼の方に近付いてきてる。


「何だ?」


低めの声音で呟くと、誰もいないはずの道にいつの間にか人影があった。
黒いマントを羽織るその人物はまるで始めからそこにいたかのように気配なく降りてきた。
そう、上からきたのだ。一瞬理解ができなかった彼はその姿を見つめてるだけで動けなかった。


「………っ、誰だ!」


吠えるように叫ぶと、男は静かに視線を少年に向けた。暗くてよくわからなかったが、柔らかく跳ねた髪の毛をした、小柄な青年に見えた。いや、実際年齢はわからない。
彼はちらりと少年を下から上まで見て、笑う。


「迷子か?」


高めの声が静かに響いた。男にしては高いのに何故か鳥肌が立つくらい威厳を感じた。そんな妙な感覚に少年は息を飲む。


「ついてこい。大きな道に案内してやる。っていっても、ついてこれるならな」

「な、何だと!」


偉そうな物言いに流石にかちんときて、少年は男に走り寄った。
しかし、一瞬で倍近い距離をあけられる。まるで羽があるかのようにゆっくりとした跳躍と共に大きなマントがはためく。それが小さな男を大きく見せて、少年は心なしか萎縮していた。
そして、いつしかその姿は闇へと消えた。


「………はぁ、………はぁ」


重い荷物を持って走ったため、予想以上の体力を消耗した。少年は一つ角を右に曲がると、そこは目的地に隣接する大通りだった。
結局、さっきの男に助けられたのだと気付けば、少年は苦い表情で目的地へ向かった。





 
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