獄ツナ
□もやもや *※
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「よ、おはよ」
「あ、おはよう。山本」
男と偽って生活する綱吉の周りには、当然のように男が集まる。今まで、気付かれずにいたことが不思議なくらいだ。
軽々しく肩を抱く山本武に顔を引きつらせたのは綱吉ではなく、隼人だった。
「てめー、10代目に気安くさわんじゃねー!」
「何でだよ、このくらい普通だろ?」
「普通じゃねぇよ!」
こんなやり取りは普段からで、今更不思議に思う人はいない。けれど、綱吉にとっても、隼人にとっても今日のやり取りは、普段とは捕らえ方が違う。
「あれ? ツナ、何か顔赤いけど」
「へ? そう、気のせいだよ」
「もしかして風邪っすか? 今日は早退しましょうか?」
「大丈夫だよ、そんなんじゃないから!」
君のせいだよ! 馬鹿!
深く溜め息をついて、綱吉は席についた。隼人と付き合ってからというもの、違うことでもハラハラする毎日が続いている。
窓から入る赤い陽。それに当たりながら綱吉は大きく伸びをする。
「はぁ、終わったぁ」
出された補習は全て終わり、やっと帰宅を許された。扉を開けると案の定笑顔全開の隼人が待っていた。
「お疲れ様です、10代目」
「ごめん、お待たせ。帰ろうか」
学校で二人っきりになれる時間は登下校。それすらも時たま他の人達によって邪魔される。
綱吉が男と偽っている限り、この関係は公認されるものではない。
ごめんね、獄寺君。