獄ツナ
□二人で
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「すいません」
「もういいって。ただ俺は………家に帰るのが憂鬱だっただけ」
「あー、ランボ達ですね」
「はぁ、また変なことしてるんだろうな」
家に帰るのが気が重いのは他の理由もあったが、それはあえて言わない。言っても、おそらくちゃんと理解してくれないと思って。
綱吉はゆっくりと足を進める。けれど、いつも合わせてくれる人が隣りにいない。振り返れば隼人は立ち尽くしたまま綱吉を見つめていた。
「獄寺君」
「このまま………二人でどっか行きますか?」
意外な言葉に目を見開く。次第に暗くなる空は二人の表情は隠して行く。一体何を考えて言ったことなのか、わからない。
「………獄で」
「すいません! 冗談っす。10代目はそんなことしたいなんて思ってませんもね」
いつも通りに笑う彼。それがどこか悲しそうに見えたのは多分見間違いじゃない。
「………獄寺君となら、寄り道もいいと思うけど」
そう言って隼人の手を取る。触れた手はどちらも同じくらい熱くて、緊張していた。
「10だ」
「でも、今日は早く帰ろっか。お腹すいたし、一緒にご飯食べよ」
陽は落ちて、もう茜色の光はなくなったのに、綱吉の顔は少し赤かった。綺麗に笑んだその顔に一瞬息を詰めて、隼人は魅入った。
「じゃぁ、10代目! いつか、二人で………」
そこまで言って止まった。今自分の目の前にいる人は自分だけのものではない。
ボンゴレを守る、まとめる尊きボスで、誰にも縛れないお方。そう、心の中で何度も復唱して表情を歪ませた。
「ねぇ、さっきの言葉、どの立場で言ったの?」
「え?」
「このままどこかに……行くって言葉」
その問いにも口を開けない。
いつからだろう、この人に……特別な感情を持ったのは。
その日からふとした時に右腕としてではなくて、個人として言葉をかけるようになってしまった。
先ほどの言葉もそうだ。だから、何も言えなくなる。
「右腕じゃない君の言葉なら…よかったのに」
ぽつりと綱吉は呟く。触れていた手を離して踵を返した。迷わずに自分の家に向かう彼を茫然と見つめて、隼人は必死で頭を回転させる。