企画小説
□夏祭り
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そして、夏祭り当日。リボーンは約束通り骸だけを家に呼んだ。
「クッフー! まさか二人きりで祭りに行けるとは、感激です」
「お前、変なことするなよ」
警戒しながらも、珍しく子供のようにはしゃぐ骸に綱吉もつられて微笑んだ。その様子に苛つかせる空気を醸し出した家庭教師に気付いて、何かされる前に家を後にした。
すっかり人が集まるその場所に心なしか気分が高まる。
「今日は自称右腕もいませんし、のんびりできますね」
「ははは…。じゃぁ、どこからまわ―――」
端から屋台を見回していた綱吉は、見慣れない文字に動きを止めた。
「ねぇ、祭りに寿司って普通ある?」
「馬鹿ですか、君は。考えなくてもわかるでしょう。普通ありません」
だよねー。
わかっていたが一応聞いたのは、それを見て思い出す人物が一人しかいないからだ。思わず近付いてその屋台に入れば、やはりそこには見知った人物がいた。
「って、あれ! な、な、何で獄寺君が!」
「あ、10代目! それに骸!」
思わず中にいるのはあの武だと思っていた綱吉は意外な人物に目を丸くした。何故彼が寿司など売っているのだろうか。
「いやぁ、実は寿司というものを握れれば右腕として更なるパワーアップが望めるかと」
つまり、ただ単に山本への対抗意識から始まった行動?
思わず売っている物を見ると、何処かの女性が作ったような怪しげな効果音を発していた。つまり、ポイズン。
「君、本気でこれ売る気ですか? 僕よりも質悪いと思いますよ?」
「何だとてめぇ! 文句なら食ってから言いやがれ」
「生憎、僕は死ぬのは嫌ですから。行きましょうか」
ごめん、と謝りながらも綱吉は連れ出してくれた骸に感謝する。あんな危ない物確かに食べたくはない。
流石ビアンキの弟…。
ははは、と乾いた笑いを浮かべて前を見る。するといつの間にかあの髪型が前にいない。
「あれ?」
まさかはぐれた?
そんなベタな。と苦笑するが、この人込みなら確かにはぐれても仕方ないだろう。下手に自分が動いても逆効果な気がした綱吉は端にある小さな空き空間に身を寄せた。
まぁ、骸なら見つけてくれるだろう。
かなり安易な考えだが、確かにこれは信頼している証拠でもある。