企画小説
□夏祭り
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「骸に変なことされませんでしたか?」
「大丈夫だよ。ちょっと危なかったけど」
ゆっくりと歩きながら屋台を眺めて、食べたいものを探す。ぶらぶらと揺れる小さな手に隼人はごくりと唾を飲んだ。
恐る恐る延ばせば、あと数センチという所で……
「ガハハハハ! ランボさん登場!」
邪魔が入る。ちょこまかと二人の回りを走り回り、勝手にコケる。
「が・ま・ん………」
「アホ牛! めんどくせーから寄るな!」
「はぁ、結局こうなるのか」
あまりいつもと変わらない状況に二人は溜め息しか出ない。仕方ないので適当に食べ物を買い与えて二人はさっさとランボから逃れた。
「もう、何してんだろ」
「そうっすね」
ふと隼人があるものを見つけて顔を輝かせた。それに気付いてその方向を見ればそこには射的。
「やりたいの?」
「いえ、やってほしいんです!」
は?
予想外の言葉に綱吉は眉を寄せる。が、強引に腕を引かれて屋台に入った。
てきぱきと料金を払い、専用の銃を綱吉に渡した。
「頑張って下さい!」
「いや、俺……絶対ノーコンだよ!」
無理と首を振っても隼人は大丈夫と念を押す。仕方なく構えて一番当たりやすい物を狙って引き金を引いた。
ポン
ポン
ポン
ポン
見事、一つも当たらず。やっぱりと口を引きつらせて溜め息をつく綱吉とは対照的に隼人は嬉しそうに騒いだ。
「かっこいいっす! 10代目!」
あぁ、撃つ姿を見たかっただけなのか。
彼の武器はグローブなので、銃を使うことなどない。一度でもいいから見てみたかったのだろう。
「でもさ、いくら何でも一発も当てられない俺よりも、山本にさぁ」
「呼んだか?」
突拍子なく現れた親友に肩を震わせて、綱吉は間抜けな表情で振り返った。何とジャージ姿の武が後ろにゾロゾロと野球部を引き連れて登場した。
「山本! もしかして今日も部活?」
「あぁ、終わったから帰るついでに寄ったんだ。お前らは………デートか?」
一応小声で聞いてくれる彼に感謝しながら、綱吉は顔を赤くして頷いた。ちなみに隼人はその姿に表情を緩ませる。