企画小説

□夏祭り
3ページ/6ページ




「あ、ボス」


小さく可愛らしい声音に振り返るとそこにはチョコバナナを片手に持つクロームがいた。


「クローム、一人?」

「ううん、二人だよ」


二人、と聞いても彼女の周りには誰もいない。首を傾げていれば、いつの間にかクロームの身体を砂が舞う。


「くろ―――」

「クフフ…」


聞こえてきた笑い声に瞬時に把握した。
あぁ、自分は今危険な状況にいる。
砂が無くなるとそこには案の定六道骸が佇んでいた。モグモグとチョコバナナを食べて、眉を寄せる。


「やっすいチョコ使ってますねー」


お前、チョコバナナに何を求めてんだよ。


「二人って、そういうことか」

「こんばんは、綱吉君。今日は一人なんですか?」

「いや、獄寺君と来たんだけど」


嫌々ながらも質問に答えれば骸の表情が曇る。しかし、すぐにあの余裕な笑みを浮かべて距離を縮めた。


「そうですか、じゃぁ、僕と一緒に回りましょうか?」

「は? 何言ってんだよ! 俺は獄寺君を探しに―――」


がっと肩を掴まれて言葉を止めた。珍しく真剣な目に綱吉は一瞬息を止めた。


「君の身体は、僕のモノですよ。さぁ、今から僕の印を刻んで――――」

「消え去れ変態!」


思い切り殴り飛ばして倒れた所を踏み付けた。


「ちょ、何するんですかっ! 僕がこんな道に目覚めてもいいんですかっ!」


マジに変態かっ!


ぞっと背筋に悪寒が走って骸から離れた。このまま二人きりだと本当に危ない。


「クフフ、待ってて下さい。今君をぼぐぅふぉ!!」


立ち上がって三尖叉を構えた骸だったが、後ろから思い切り蹴りをいれられてまた倒れる。


「てめぇ、俺がいない間に10代目に何してんだ!」

「獄寺君!」


両手にジュースを持った彼は恋人の声にすぐさま爽やかな笑顔を向けた。そのまま骸を踏み付けて駆け寄れば、その一つを綱吉に渡す。


「すいません、喉渇いてるかと思いまして」

「あ、ありがと」


なんだ、はぐれたわけじゃないのか。


少しだけ安堵してジュースを飲む。美味しいと呟けば彼は満足そうに笑った。


「じゃぁ、行きましょうか」

「うん」


そして、二人はそのまま骸のことを忘れてまた歩き始めた。





 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ