企画小説
□夏祭り
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そして、夏祭り当日。リボーンは約束通り隼人だけを家に呼んだ。
「10代目と二人だけでこういうのが行けるなんて感激です」
「はは、何だかんだ毎回邪魔入るもんね」
子供のように顔を輝かせる隼人に綱吉もつられて微笑む。その様子に苛つかせる空気を醸し出した家庭教師に気付いて、何かされる前に家を後にした。
すっかり人が集まるその場所に心なしか気分が高まる。
「今日はアホ牛もいませんし、のんびり食べれますよ」
「確かに。じゃぁ、どこからまわ―――」
端から屋台を見回していた綱吉は、見慣れない文字に動きを止めた。
「ねぇ、祭りに寿司って普通ある?」
「いえ、普通ありません」
だよねー。
わかっていたが一応聞いたのは、それを見て思い出す人物が一人しかいないからだ。思わず近付いてその屋台に入れば、やはりそこには見知った人物がいた。
「って、あれ! な、な、何で雲雀さぁん!」
「やぁ」
思わず中にいるのはあの親友だと思っていた二人は意外な人物に目を丸くした。しかもやはり接客しているのは風紀委員だ。
彼は優雅に後ろで椅子に座り、たこ焼きを楽しんでいた。
ヤバイ、逃げなきゃ。
恭弥だと知っていたら入らなかったのに、と深く後悔しながらも、綱吉は逃れる方法を考える。
「ねぇ、もちろん買うよね?」
「あ、いや、そんな……」
「は、誰が祭りで寿司なんか買うかよ! 行きましょう、10代目」
無理やりに綱吉を引っ張って隼人は逃げる。何とか人込みに紛れれば、後ろから人の呻き声が聞こえたのは言うまでもない。
まぁ、群れてるし………。
心の中で一応謝りながら二人は声がなくなる場所まで走った。
肩を上下させて息を吸う。すっかり汗だくになった彼は端にある大きめな石に座る。すると、隣りにいた隼人がいないことにやっと気付いた。
「あれ?」
まさかはぐれた?
そんなベタな。と苦笑するが、この人込みの中で走れば確かにはぐれても仕方ないだろう。
探さなきゃ
と、立ち上がる。