企画小説
□肝試し
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「結構何もないですね」
「何もない方が面倒がなくていいでしょ」
確かにと綱吉は頷いた。毎回やる変なイベントには必ず自分が被害を受けてるのだ。少しくらいは平和でいきたい。
「にしても毎回こういうことしなくていいのに。前回なんてランボがペアで、しかもロメオ出て来るし」
「誰、それ? 君…本当いろんな奴と群れてるね」
「す、すいません!」
鋭い視線に綱吉は顔を青くした。少し機嫌を損ねたのか恭弥は口を閉じて早足で歩く。
「あ、待って下さ――」
ヒヤリ
「ひゃぁ!」
冷たい何かが首筋に当たり身体を竦ませる。瞬間、尋常ではない早さで綱吉を抱えて恭弥は前に立った。まるで守るように。
しかし、後ろに庇われた綱吉は地面が歪んで沈んで行くことが理解できず、落ちた。
「―――ちょ、」
気付けば何故か恭弥も一緒になって落とし穴に落ちていた。ムスッとした表情で綱吉を見やる。
「いつから握ってたの?」
「え、あ! すいません!」
握ったままの学ランにようやく気付いた。このせいで恭弥まで穴に落ちたのだ。
申し訳ない様子で俯けば、恭弥は一回溜め息をついて綱吉に手を差し延べる。
「いつまでその中にいる気?」
「ありがとう、ございます」
穴から這い出た時地面に転がるコンニャクに気付いた。これが首筋に張り付いたのかと妙に納得した。
恭弥はそれを拾い、力一杯右側の木々へと投げ付けた。