拍手感謝小説倉庫
□2009.12 ヒバツナ
2ページ/4ページ
あれからどれくらいの時間がたっただろうか。
「だから、これは最初に()を無くしてから移行させるだって」
「は、はい」
それでも俺の勉強は数学から動かない。しかもまだ範囲の半分も終わらない。
同じことを何度も言われてるのに覚えられない俺に苛つき始めた雲雀さんは深く溜め息をついた。
「す、すいません」
「綱吉………今僕は君の頭を侮っていた自分を恨むよ」
「そ、そんなこと言わないで下さい! 俺だって自分の頭をどうにかしたいのに」
情けなくて顔を伏せた俺に雲雀さんはもう一度溜め息をついて、頭を撫でてくれた。
「綱吉」
意外にも優しい声音につられて顔を上げれば、少し熱っぽい視線が俺に向けられていた。
何度か体験してきたこの空気は、あれだ。あの予兆。ごく、と唾を飲んでじっと雲雀さんを見てれば、次第に顔が近付いて来る。
不意に目をつむる。
だけど、いつまでも予想する行為が始まらない。
「………? 雲雀さん?」
目を開ければ彼は考えるように顎に手を当てていた。
そして、妖艶に微笑む。
「綱吉、キスしたい?」
「ぅえ! な、何ですか! いきなり」
まさかそんなことを聞かれるとは思わなくて、変に慌てて問えば、それでも雲雀さんはもう一度同じことを聞いてきた。
「ねぇ、したい?」
聞き方が妙にエロいです。雲雀さん…。
とにかく俺はこれに答えなきゃいけないらしい。さっきまでそんな雰囲気だったから、する準備は万全だ。
俺の気持ちだって、すっかりその気。
「………、し、したいです」
思い切って口に出せばやっぱり恥ずかしくて、顔を伏せる。
「うん、じゃぁ、勉強の続きやろうか」
「はい。―――て、え! キスはっ!」
「だから、テスト終わっていい点取ったら沢山してあげるよ」
そんな、数日もお預けですかっ!
じゃぁ、もし悪かったら次のテストまで??!
「綱吉、だからさ」
「……はい?」
「僕もあんまり待ちたくないから、死ぬ気でいい点取ってね」
にっこりとやっぱり含んだ笑みを浮かべて、彼は俺の家庭教師より厳しく指導してくれました。
泣きたい。