ムクツナ
□貴方だけのお姫様 *
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「町なんて久し振りよ」
「何故、いきなり?」
馬車から降りて笑う私に不思議そうに問う貴方。私と貴方は王族。こんな所に足を運ぶなんて論外。
「こういう所歩くの好きなのよ。何かおかしいかしら?」
「いえ、少し意外だっただけです」
優しく笑う貴方に視線を逸らす。あぁ、もう、だから嫌なのよ。
「わ、わかったらアイス買って来て! 今すぐによ!」
「………はい」
貴方は何でもこなす。私のために、将来のために。
わがままなんて言ってないわ。これは当然なんだから。
私はお姫様。どんなことも許される、そうでしょう?
「はい、いちごのアイスです」
「……貴方はよかったの?」
「はい?」
「―――、何でもないわ」
甘いそれを口に含みながら、右手をぶらつかせる。ねぇ、貴方はいつになったら気付くの!
もう、待ちくたびれちゃう。
優しい、優しい貴方。
見掛けたのはいつだったかしら。
目を閉じるとすぐに思い出す。
でも、それすらも癪なのよ。
「あれが欲しいわ」
「………、あの」
「欲しいわ」
「はい」
王子である貴方が人のために買い物をする。どうして貴方はそんなことに耐えれるの? 私にはわからない。