ムクツナ

□両方です
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まさか。
この僕がそんな愚かな考え……、ありえない。





『ボス………骸様のこと、心配?』


微かに聞こえる彼女の会話に僕は眉を寄せた。いつの間にかボンゴレと接触してたらしい。
しかも話の方向が見えない。


『そりゃぁ、心配に決まってるだろ』


きっぱりと言われた言葉に目を見開く。当然のように言われたそれに今度は苦笑を漏らした。
甘い、本当に甘い君。
そんなことを誰にだって言えるんだろう。


『どうして?』


会話は続く。いくつか交わされたそれは僕には合わない優しいもの。


『俺が、骸のこと好きだからかな』





ど、くん。





は?
何が、起きました?
好き、ボンゴレが? 僕を………?


ど、くん。


重たい瞼がいつの間にか開いていた。映る景色は灰色の固いコンクリート。
無意識に行なったそれに一瞬自分でも理解できなかった。


動揺か、

それとも


いや、両方……ですかね。


「クローム?」

「く、クフフ」


本当、驚きです。こんな感情が僕にも流れているなんて。


「まさかそんなことを聞けるとは思いませんでしたよ」


そう、知らなかった。
君のその感情も、
僕のこの感情も。


「甘い甘いとは思ってはおりましたが、まさか敵に恋をするとはそうとう愚かなボスですね」


愚かだ。君よりも、誰よりも、これに気付かなかった僕自身が。





「沢田綱吉。可愛がってあげますから、僕に君の心を下さいますか?」





僕も、君が好きだったんですね。





 
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