ヒバツナ

□予定は無意味
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腑に落ちない。


応接室にて彼はイライラと鉛筆を揺らす。その部屋にいるのは彼一人。ガランとした空間は静けさを保っている。
ちらりと外を見れば、部活に勤しむ生徒の姿。


「やっぱり、納得いかない」


一人呟き、彼は溜め息をついた。
思い浮かべるのは彼より一学年下の沢田綱吉。彼に逃げられる覚悟で告白したのはつい最近のこと。
意外にも顔を真っ赤にして応えてくれたはずの彼はあれから一度も会いに来ない。これでは以前と何ら変わりない。
そう、彼が今イラついてるのはそれが原因なわけで、どうしようかかれこれ一時間は悩んでいる。
そんなこと考えている間に会いに行けばいいのに、と何故かそんな考えは未だ生まれない。


「僕達……付き合ってるんじゃないの?」


変わらない関係。変わらない状況。
これで本当に恋人同士と言えるのだろうか。不安がイラつきに変わり、イラつきが悲しみに変わる。

彼は今どうしてるのだろうか。





□□□■■■□□□





翌日、彼の手元にはメモがあった。誰かが置いて行ったのではない。恭弥が一晩悩んで作成したものだ。


「草壁」

「はい」

「確認して」


差し出されたメモを不思議そうに見つめる。するとそこには彼の一日の行動が記されていた。


8:00〜 書類
9:00〜 見回り
10:00〜 昼寝
12:00〜 沢田を探す
12:10〜 沢田を見つける
12:20〜 沢田に問詰める
14:00〜 書類
16:00〜 見回り
17:00〜 沢田と帰る
17:30〜 家に連れて帰る
18:00〜 二人でラブる


そこまで読んで草壁は震えた。


「委員長」

「何? どっか問題でも?」

「いえ、あえて言うなら…もっとご自分のプライバシーを大切に―――」

「は?」


泣き出して出て行ってしまった彼に恭弥は首を傾げる。自分の行動に自制が持てないからわざわざスケジュールを作り、助言を聞こうと思ったのだが、意味がなかったようだ。


「ま、いっか」


気にする事なく、スケジュール通りに行動し始めた。





10:00

見回りも終えて恭弥は屋上へと向かう。まだ授業中の為に校舎内は静かだ。
屋上に行くと視界の端に掠めたものに恭弥は固まる。


「な、んで」


君がここにいるの?


屋上にいる先客は今日の昼に探す予定だった恋人。
すぅすぅと規則正しい寝息を立てて、眠っている。いつから、顔を合わせていなかっただろうか。





 
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