ヒバツナ
□願い事
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舞い上がった気持ち
くすぐる甘さ
だけど、気付く
あることに―――
誰もいない廊下をゆっくりと歩いて綱吉はある場所に向かう。
おそらく彼以外に近付く者は滅多にいない、あの場所。
ある時から毎回その場所に足を向けるようになった彼は、いつもと違い少し浮かない表情を浮かべていた。
やっとついた扉の前で静かに溜め息をついてノックする。
「こんにちは」
「入って」
淡々とした口調で呟かれた言葉に素直に従い、綱吉は部屋に入る。生徒が使うには不自然な部屋に当然のようにいる、彼風紀委員長様は学校のものとしては少し高価な机で書類を目を通していた。
「忙しいですか?」
「もう少しで体育祭だからね」
そういえばそんなものがあったな。
と、綱吉は思い出す。運動が得意ではない彼にとってそれはどうでもいい行事なのだ。
暇なのでとりあえずソファに座る。ちらりと横目で彼を見やればいつもの無表情な顔が書類の横から覗いた。
いつ見ても綺麗な顔だなぁ…。
中学生とは思えないその端麗な顔立ちにそっと息をついた。
群れるのが嫌い。
気まぐれ屋。
闘うことを好む彼。
何故自分を好きになったのだろう。と今更考える。
だってわかんないよ、雲雀さんかっこいいし、モテそうなのに。何で男のしかもダメツナな俺なんだろう…。