ヒバツナ
□染まったのは、雲じゃなく大空 *
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青い、空を見るのがオレの癖だった。
揺れる風に髪が靡く。
大きな甘栗色の瞳を、その青い空に向けて彼女は静かに息を吐いた。
「サボり?」
気配なくかけられた声に肩を揺らす。揺れる瞳を声がした方に向ければ、同じく漆黒の髪を風に靡かせた彼がいた。
「ごめんなさい」
謝りながらも彼女は微笑んだ。苦笑にも似たその表情にどうしてかいつものように咬み殺す気にもなれず、彼は溜め息をついた。
「まあ、君が一人でいるのも珍しいから、今日は大目に見てあげるよ」
「ありがとうございます、雲雀さん」
今度は綺麗に微笑んだ彼女に、恭弥はつい目が逸らせなかった。
背後にある大きな青い空と存在が被る彼女。いつからそんな風に思ったのか。中学のあの頃にはきっと持っていなかった思考に、彼は目を細める。
「沢田…、君」
「雲雀さんは、守護者についてどう思いますか?」
珍しく彼女からの質問に、一度口を閉じる。
ツナの目はまた大きな空に向けられて、あの顔は見れない。それが少し残念にも思える心境で、いつものように淡々と答えた。
「別に。僕は守護者なんかになったつもりはないし、君がどうしようとどうでもいいし。何をしようが勝手だけど、僕のやることを邪魔するなら、守護者だろうが、ボスだろうが、ボンゴレだろうが、全て…咬み殺すだけさ」
いつも通りの彼の答えに、ツナは密かに微笑んだ。
いつだって自然体で、自分でも見失っているものを、彼は教えてくれる。
守護者とか、ボスとか、そんな肩書きはどうでもいいのだ。
「そうですね」
要は自分が何をしたいのか。
要は自分が何を求めてるのか。
「一体何を聞きたいの?」
「いえ、ちょっと進路について悩んでただけです」
ありがとうございます、といつもの彼女の微笑みを恭弥に向けて、ツナは屋上を後にした。
残された恭弥はいつまでも色あせることのない、彼女のような青空をただ見つめた。